臨床指標(クリニカルインディケーター)
臨床指標(クリニカルインディケーター)とは医療の質を定量的に評価する指標のことで、指標に基づいて診療の過程や結果を分析することで課題や改善点を見つけ出すことができます。当院では日本病院会のQIプロジェクトの指標を参考に臨床指標を定めて分析を行っています。
2. 業務改善活動事例
当院で定めている36指標のうち5指標について重点指標として扱い、PDCAサイクルという手法を用いて業務改善に努めています。
※令和5年度からレイアウトを変更しています。
3. 指標の説明・結果
各指標について計算方法が変わった場合でも過去分の再計算は行っていません。
また、日本病院会QIプロジェクト平均値は当該年度の報告書の値を掲載しています。
計算方法
分子 |
患者満足度調査の「この病院を親しい方に勧めようと思いますか」という設問に対し、5段階評価のうち上位2つの評価に該当する回答をした外来(入院)患者数 |
分母 |
患者満足度調査の「この病院を親しい方に勧めようと思いますか」という設問に回答した外来(入院)患者数 |
指標の説明
- 患者満足度調査の「この病院を親しい方に勧めようと思いますか」という設問に対し、5段階評価(勧める、まあまあ勧める、どちらともいえない、あまり勧めない、勧めない)のうち「勧める」「まあまあ勧める」と回答した人の割合です。
- 患者満足度調査は、当院が提供する医療サービスに対して患者さんがどのように感じているかを把握し、医療サービスの一層の充実を図るために年1回実施しています。
※QIプロジェクトでは「この病院について総合的にはどう思われますか?」という設問に対し、5段階評価(満足、やや満足、どちらともいえない、やや不満、不満)のうち「満足」「やや満足」と回答した人の割合を患者満足度としていますが、当院では日本医療機能評価機構の「患者満足度・職員やりがい度活用支援」に基づき患者満足度調査を実施しているため、総合評価の設問が「この病院を親しい方に勧めたい」となっています。
考察
- 総合的な満足度は、入院患者については昨年度より向上しています。外来患者については昨年度よりポイントの減少が見られますが、ベンチマーク(※)の73.5ポイントを上回り、各項目とも概ね70~80%の高いレベルをキープできています。
※ベンチマーク・・・当院が利用している、日本医療機能評価機構が行う「患者満足度・職員やりがい度活用支援」に参加している病院の回答平均値
- 外来患者については、接遇面・診療面でポイントが減少している設問が複数あったため、患者様への接し方や接遇面など、職員全員が再度意識し、改善に取り組みます。時間面で診療の待ち時間でポイントの向上がみられる一方、会計の待ち時間や、時間面全般についての設問では減少しているため、引き続き、待ち時間の改善に取り組みます。
- 入院患者の総合的な満足度については、院内施設面、環境面は清掃スタッフの努力により、保たれています。一方、診療面では、ポイントが減少している設問が複数ありましたので、引き続き、職員同士の連携など改善に取り組み、今後ともより良い病院づくりを進めます。
入院患者の転倒・転落発生率
入院患者の転倒・転落による損傷発生率(レベル2以上・レベル4以上)
②入院患者の転倒・転落による損傷発生率(レベル2以上)
③入院患者の転倒・転落による損傷発生率(レベル4以上)
計算方法
分子 |
① 入院中の患者に発生した転倒・転落件数 ② 入院中の患者に発生した損傷レベル2以上の転倒・転落件数 ③ 入院中の患者に発生した損傷レベル4以上の転倒・転落件数
※転倒・転落件数は医療安全管理部門にインシデント報告が提出された件数 |
分母 |
入院患者延べ数 |
指標の説明
- 転倒・転落は骨折などの怪我に繋がる可能性が高く、病状の回復や日常生活の動作に支障が生じるなど、患者さんの生活の質に大きな影響を及ぼします。
- 入院中は生活環境の変化や病気そのもの、治療や薬剤などの影響で自宅にいるときより転倒・転落のリスクが高くなります。転倒・転落を100%防止することは難しいのが現状ですが、発生率や事例を分析することで転倒・転落による損傷の低減に役立てています。
※転倒・転落の損傷レベルはThe Joint Commission(医療施設認定合同機構)が発表しているNursing-Sensitive Careの定義を使用しています。
The Joint CommissionのNursing-Sensitive CareによるFall Injury Level
1. なし |
患者に損傷はなかった |
2. 軽度 |
包帯、氷、創傷洗浄、四肢の挙上、局所薬が必要となった、あざ・擦り傷を招いた |
3. 中軽度 |
縫合、ステリー・皮膚接着剤、副子が必要となった、または筋肉・関節の挫傷を招いた |
4. 重度 |
手術、ギプス、牽引、骨折を招いた・必要となった、または神経損傷・身体内部損傷の診察が必要となった |
5. 死亡 |
転倒による損傷の結果、患者が死亡した |
6. UTD |
記録からは判定不可能 |
考察
- 転倒・転落発生率は昨年度より0.21‰増加している。入院患者の高齢化や重症率の増加により、転倒・転落を発生しやすい環境ではあるが、患者の人権を尊重し、身体抑制低減に努めている中で、転倒・転落の発生は微増で抑えられている。更に、転倒・転落により生じる損傷レベルについては、増加を抑えられており、転倒・転落アセスメントシートで評価を行いながら、対策を行っている結果の反映と考える。
- 入院患者の65歳以上の割合
・令和3年度 - 56.4%
・令和4年度 - 58.3%
褥瘡発生率
計算方法
分子 |
d2(真皮までの損傷)以上の院内新規褥瘡発生患者数 |
分母 |
入院患者延べ数 |
除外 |
・同日入退院患者数 ・入院時刻から24時間以内に褥瘡(d1,d2,D3,D4,D5,DTI,U)の記録がある患者数 ・同一入院期間中の調査期間以前に院内新規褥瘡があった患者数 |
指標の説明
- 褥瘡とは、長時間寝ていたり座っていたりする場合に、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなり皮膚・皮下組織が損傷してしまう現象のことで、一般的には床ずれと言われているものです。
- 痛みなどの知覚が低下した場合に発生しやすくなりますが、それに加えて栄養状態、関節の変形の有無、運動能力の低下といった様々な要因が絡み合って発生するため、褥瘡のケアについて専門的な知識を持ったスタッフによる看護体制を敷くことが重要です。
※褥瘡の深さは日本褥瘡学会が発表しているDESIGN-R®2020の定義を使用しています。
日本褥瘡学会のDESIGN-R®2020による褥瘡の深さ
d0 |
皮膚損傷・発赤なし |
d1 |
持続する発赤 |
d2 |
真皮までの損傷 |
D3 |
皮下組織までの損傷 |
D4 |
皮下組織を越える損傷 |
D5 |
関節腔、体腔に至る損傷 |
DTI |
深部損傷褥瘡(DTI)疑い |
DU |
壊死組織で覆われ深さの判定が不能の場合 |
考察
- 令和4年度は、新型コロナウイルス感染症患者の対応と高度急性期医療の両立をするため、病床稼働率の高い状態が続きました。病床を有効に使用するため複数科の患者さんが混在して入院する状況となりました。高齢者施設のクラスター発生により後期高齢者の入院受け入れが多数あり、入院患者の平均年齢は上昇しました。そのような状況の中、褥瘡リスクアセスメントを適切に行い、適切なマットレスを使用することで褥瘡発生率は前年度を下回ることが出来ました。取り組みの一環として病棟でマットレスカンファレンスを行い、適切なマットレスを使用したことや、病棟管理栄養士・栄養サポートチームと協働し、褥瘡発生リスクのある患者さんに対して、全身状態の総合的なアセスメントと、栄養面への介入を行ったことが有効だったと考えます。
- 入院患者の平均年齢
・令和3年度 - 60.4歳
・令和4年度 - 61.3歳
特定術式における手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率
計算方法
分子 |
手術開始前1時間以内に予防的抗菌薬が投与開始された手術件数 |
分母 |
下記の術式の手術件数 • 冠動脈バイパス手術 • そのほかの心臓手術 • 股関節人工骨頭置換術 • 膝関節置換術 • 血管手術 • 大腸手術 • 子宮全摘除術 |
除外 |
・入院時年齢が18歳未満の患者 ・在院日数が120日以上の患者 ・帝王切開手術施行患者 ・臨床試験・治験を実施している患者 ・術前に感染が明記されている患者 ・全身/脊椎/硬膜外麻酔で行われた手術・手技が、主たる術式の前後3日(主たる術式が冠動脈バイパス手術またはそのほかの心臓手術の場合は4日)に行われた患者 ・外来手術施行患者 |
指標の説明
- 滅菌法や消毒法などの医療技術が進歩した現代においても細菌感染を防止することは困難な課題です。手術後に手術部位感染(Surgical Site Infection : SSI)が発生すると傷病の治癒が遅くなり、患者さんの負担になるため、当院ではあらゆる手段を講じて感染防止に努めています。
- SSIを予防する対策の一つとして手術前後の抗菌薬投与があり、手術開始から終了後2~3時間まで血中及び組織中の抗菌薬濃度を保つことでSSIを予防できる可能性が高くなります。このため手術開始前1時間以内に適切な抗菌薬を静脈注射する必要があります。
考察
- 開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与は高い水準で推移できており、手術部位感染(SSI)発生予防対策の1つとして効果が得られています。患者状態の変化を踏まえながら、適切な対応ができるよう取り組んでいきます。
特定術式における術後24時間(心臓手術は48時間)以内の予防的抗菌薬投与停止率
計算方法
分子 |
術後24時間以内に予防的抗菌薬投与が停止された手術件数 (冠動脈バイパス手術またはそのほかの心臓手術の場合48時間以内) |
分母 |
下記の術式の手術件数 • 冠動脈バイパス手術 • そのほかの心臓手術 • 大腸手術 • 子宮全摘除術 |
除外 |
・入院時年齢が18歳未満の患者 ・在院日数が120日以上の患者 ・帝王切開手術施行患者 ・臨床試験・治験を実施している患者 ・術前に感染が明記されている患者 ・全身/脊椎/硬膜外麻酔で行われた手術・手技が、主たる術式の前後3日(主たる術式が冠動脈バイパス手術またはそのほかの心臓手術の場合は4日)に行われた患者 ・術後の抗菌薬長期投与の理由が記載されている患者 ・手術室内または回復室内での死亡患者 |
指標の説明
- 滅菌法や消毒法などの医療技術が進歩した現代においても細菌感染を防止することは困難な課題です。手術後に手術部位感染(Surgical Site Infection : SSI)が発生すると傷病の治癒が遅くなり、患者さんの負担になるため、当院ではあらゆる手段を講じて感染防止に努めています。
- SSIを予防する対策の一つとして手術前後の抗菌薬投与があり、手術開始から終了後2~3時間まで血中及び組織中の抗菌薬濃度を保つことでSSIを予防できる可能性が高くなりますが、不必要に長期間投与することで副作用の危険性、耐性菌の出現、医療費の増大に繋がるため、漫然と投与しないよう注意が必要です。
考察
- 抗菌薬停止は、各診療科ごとの投与計画より推進されています。
特定術式における適切な予防的抗菌薬選択率
計算方法
分子 |
特定術式ごとに適切な予防的抗菌薬が選択された手術件数 |
分母 |
下記の術式の手術件数 • 冠動脈バイパス手術 • そのほかの心臓手術 • 股関節人工骨頭置換術 • 膝関節置換術 • 血管手術 • 大腸手術 • 子宮全摘除術 |
除外 |
・入院時年齢が18歳未満の患者 ・在院日数が120日以上の患者 ・帝王切開手術施行患者 ・臨床試験・治験を実施している患者 ・術前に感染が明記されている患者 ・全身/脊椎/硬膜外麻酔で行われた手術・手技が、主たる術式の前後3日(主たる術式が冠動脈バイパス手術またはそのほかの心臓手術の場合は4日)に行われた患者 ・手術室内または回復室内での死亡患者 |
指標の説明
- 滅菌法や消毒法などの医療技術が進歩した現代においても細菌感染を防止することは困難な課題です。手術後に手術部位感染(Surgical Site Infection : SSI)が発生すると傷病の治癒が遅くなり、患者さんの負担になるため、当院ではあらゆる手段を講じて感染防止に努めています。
- SSIを予防する対策の一つとして手術前後の抗菌薬投与があり、手術開始から終了後2~3時間まで血中及び組織中の抗菌薬濃度を保つことでSSIを予防できる可能性が高くなります。このため手術開始前1時間以内に適切な抗菌薬を静脈注射する必要があります。
- 抗菌薬の不適切で無計画な投与は副作用の危険性、耐性菌の出現、医療費の増大に繋がるため、漫然と投与しないよう注意が必要です。
考察
- 基本的にはガイドライン推奨の抗菌薬を使用しています。一部の症例では、患者の状態を踏まえつつ、ガイドライン推奨外の抗菌薬を適切に使用しています。適切な抗菌薬の選択ができなかった事例は、手術による感染以外のリスクを考慮された事例等で主治医の判断による変更です。選択薬は推奨と異なりますが、感染症マネジメントの観点では不適切な抗菌薬選択ではありませんでした。
死亡退院患者率
計算方法
分子 |
死亡退院患者数 |
分母 |
退院患者数 |
除外 |
・DPCで様式1に含まれる「救急患者として受け入れた患者が、処置室、手術室等において死亡した場合で、当該保険医療機関が救急医療を担う施設として確保することとされている専用病床に入院したものとみなされるもの(死亡時の1日分の入院料等を算定するもの)。」 ・緩和ケア病棟退院患者 |
指標の説明
- 死亡退院患者率は、その推移を追っていくことで医療の質が変化していないかを知るのに役立ちます。
※どの病院でも算出できますが、医療施設の特徴(病床数、地域性など)や入院患者のプロフィール(年齢、性別、疾患の種類など)が異なるため、他施設と比較することは適切ではありません。
考察
- 当院は第1種感染症指定医療機関としてCOVID-19を数多く受け入れています。また、地域の重症患者についても積極的に受け入れています。
退院後4週間以内の予定外再入院割合
計算方法
分子 |
前回退院から4週間以内に計画外で再入院した症例数 |
除外 |
再入院種別が「計画外の再入院」かつ、理由種別が「新たな他疾患発症のため」の症例数 |
分母 |
退院症例数(令和4年度中に退院した患者) |
指標の説明
- 入院生活は日常生活と異なる不便さがあることや仕事から長期間離れなくてはならないなど、入院患者さんに及ぼす影響は大きく、入院期間はできるだけ短いことが望まれます。
- 一方、無理に入院期間を短くして退院させても、すぐ再入院をすることになってむしろ治療が長引いたり、治療費の負担が増えたりします。
- 予想外に症状の悪化が進んだり、前回の入院とは関連のない傷病などで入院することもあるため、予定外の入院をなくすことはできませんが、できるだけ減らしていく必要があります。
考察
再入院理由内訳
原疾患(※1)の悪化、再発のため |
269件 |
原疾患(※1) の合併症発症のため |
130件 |
前回入院時の入院時併存症の悪化のため |
10件 |
前回入院時の入院後発症疾患の悪化のため |
3件 |
前回入院時の手術・処置や治療の合併症が退院後に発症したため |
1件 |
その他 |
31件 |
※1:前回入院時の主傷病名と医療資源を最も投入した傷病
糖尿病患者の血糖コントロール
①糖尿病患者の血糖コントロール
HbA1c 7.0%未満
②65歳以上の糖尿病患者の血糖コントロール HbA1c 8.0%未満
計算方法
分子 |
① HbA1c(NGSP)の最終値が7.0%未満の外来患者数 ② HbA1c(NGSP)の最終値が8.0%未満で65歳以上の外来患者数 |
分母 |
① 糖尿病の薬物治療を施行されている外来患者数 (過去1年間に糖尿病治療薬が外来で合計90日以上処方されている患者) ② 糖尿病の薬物治療を施行されている65歳以上の外来患者数 (過去1年間に糖尿病治療薬が外来で合計90日以上処方されている65歳以上の患者) |
除外 |
運動療法または食事療法のみの患者 |
指標の説明
- 糖尿病の治療には運動療法、食事療法、薬物療法がありますが、運動療法や食事療法の実施を正確に把握するのは難しいため、薬物療法を施行されている患者で適切な血糖コントロールがなされているかを指標としています。
- HbA1c(ヘモグロビンA1c)は、過去2~3か月間の血糖値のコントロール状態を示す値です(正常値は6.2%未満)。糖尿病による合併症の頻度はHbA1cに比例しており、合併症を予防するためにはHbA1cを7.0%未満に維持することが推奨されています(認知症で食事の記憶ができない患者さん、糖尿病自律神経症で低血糖を感知できない患者さん、狭心症で血糖を高めにした方が安全な患者さんなどは目標値が変えたほうがよいことがあります)。
- 低血糖を起こしやすい高齢者については、HbA1cの目標値を8.0%未満にしています。
考察
- 高度急性期医療を担う役割を踏まえ、HbA1cが7.0%以上であっても、当院では合併症リスクが低くなり次第(数値のコントロールができ次第)、適正な紹介を促進し、地域医療機関と連携を強化しつつ、機能分化を図っています。
急性心筋梗塞患者におけるアスピリン投与割合
計算方法
分子 |
アスピリンもしくはクロピドグレルが投与された症例数 |
分母 |
急性心筋梗塞で入院した症例数 |
指標の説明
- 急性心筋梗塞は、心臓の筋肉に栄養分や酸素を供給する冠動脈に血栓が生じることで心臓の筋肉細胞が壊死してしまう病気です。
- 日本循環器学会『急性冠症候群ガイドライン』では、退院後に病気が再発することを予防するために抗血栓薬(アスピリン等)、β遮断薬(βブロッカー)、脂質代謝異常改善薬(スタチン等)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンⅡ受容体阻害剤(ARB)等のうち、必要なものを投与することが推奨されています。
急性心筋梗塞に対する処方薬
横にスクロールしてご覧ください。
|
効能/効果 |
禁忌 |
アスピリン |
・血小板凝集を阻害することにより、血栓・塞栓が形成されることを抑制する。 ・特に、冠動脈バイパス術あるいは経皮経管冠動脈形成術施行後での投与は重要である。 |
・出血傾向のある患者 ・消化性潰瘍のある患者 ・出産予定日12週以内の妊婦 ・非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作が誘発される恐れのある患者 |
考察
- アスピリンの未投与例は、抗凝固薬使用例や消化性潰瘍の既往例で、アスピリンを外してチエノピリジン系薬剤(クロピドグレル)を投与しています。(抗血栓薬は100%の症例で使用されています。)
急性心筋梗塞患者におけるβブロッカー投与割合
計算方法
分子 |
βブロッカーが投与された症例数 |
分母 |
急性心筋梗塞で入院した症例数 |
指標の説明
- 急性心筋梗塞は、心臓の筋肉に栄養分や酸素を供給する冠動脈に血栓が生じることで心臓の筋肉細胞が壊死してしまう病気です。
- 日本循環器学会『急性冠症候群ガイドライン』では、退院後に病気が再発することを予防するために抗血栓薬(アスピリン等)、β遮断薬(βブロッカー)、脂質代謝異常改善薬(スタチン等)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンⅡ受容体阻害剤(ARB)等のうち、必要なものを投与することが推奨されています。
急性心筋梗塞に対する処方薬
横にスクロールしてご覧ください。
|
効能/効果 |
禁忌 |
βブロッカー |
・心拍数・心筋収縮力の抑制作用により、心筋酸素消費を軽減させて狭心症を抑制する。 ・心房細動の抑制に効果がある。 |
・ペースメーカの入っていない高度徐脈やⅡ~Ⅲ度房室ブロック ・重度の末梢循環不全での使用 ・冠攣縮性狭心症での単独使用 ・気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患 |
考察
- 急性心筋梗塞症例におけるβブロッカー投与を行っていない症例については、小梗塞で心機能に問題のない心室性不整脈もない場合(特に低血圧、徐脈傾向)や禁忌にも記載があるような重篤な疾患をお持ちの症例等につきましては投与をされていません。
急性心筋梗塞患者におけるスタチン投与割合
計算方法
分子 |
スタチンが投与された症例数 |
分母 |
急性心筋梗塞で入院した症例数 |
除外 |
死亡退院症例 |
指標の説明
- 急性心筋梗塞は、心臓の筋肉に栄養分や酸素を供給する冠動脈に血栓が生じることで心臓の筋肉細胞が壊死してしまう病気です。
- 日本循環器学会『急性冠症候群ガイドライン』では、退院後に病気が再発することを予防するために抗血栓薬(アスピリン等)、β遮断薬(βブロッカー)、脂質代謝異常改善薬(スタチン等)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンⅡ受容体阻害剤(ARB)等のうち、必要なものを投与することが推奨されています。
急性心筋梗塞に対する処方薬
横にスクロールしてご覧ください。
|
効能/効果 |
禁忌 |
スタチン |
脂質代謝異常を改善し、冠動脈狭窄の要因となっているプラーク(血管内にできる脂肪分のコブ)を退縮させる。 |
・重篤な肝機能障害のある患者 ・妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦 |
考察
- 急性心筋梗塞症例における退院時スタチン投与は、ほぼ全症例でスタチンを投与しています。以前にスタチン不耐性が分かっている症例については処方していません。
急性心筋梗塞患者におけるACEIもしくはARBの投与割合
計算方法
分子 |
ACE阻害剤(ACEI)もしくはアンギオテンシンⅡ受容体阻害剤(ARB)が投与された症例数 |
分母 |
急性心筋梗塞で入院した症例数 |
指標の説明
- 急性心筋梗塞は、心臓の筋肉に栄養分や酸素を供給する冠動脈に血栓が生じることで心臓の筋肉細胞が壊死してしまう病気です。
- 日本循環器学会『急性冠症候群ガイドライン』では、退院後に病気が再発することを予防するために抗血栓薬(アスピリン等)、β遮断薬(βブロッカー)、脂質代謝異常改善薬(スタチン等)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンⅡ受容体阻害剤(ARB)等のうち、必要なものを投与することが推奨されています。
急性心筋梗塞に対する処方薬
横にスクロールしてご覧ください。
|
効能/効果 |
禁忌 |
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤 |
・腎臓での血流の調節機構を構成するACEを阻害することにより、末梢血管を拡張し血圧を下げる。 ・腎臓の輸出細動脈を拡張し、アンジオテンシンII受容体拮抗薬とともに糸球体内圧を下げることにより、腎臓を保護する。 |
・血管浮腫の既往歴のある患者 ・アクリロニトリルメタリルスルホン酸ナトリウム膜(AN69)を用いた血液透析施行中の患者 ・妊婦又は妊娠している可能性のある婦人 ・アリスキレンを投与中の糖尿病患者 |
アンギオテンシンⅡ 受容体阻害剤 (ARB) |
腎臓での血流の調節機構を構成するアンギオテンシンⅡが、受容体と結合することを阻害することにより、末梢血管を拡張し血圧を下げる。 |
・妊婦又は妊娠している可能性のある婦人 ・アリスキレンを投与中の糖尿病患者 |
考察
- 急性心筋梗塞症例におけるACE阻害薬およびARBの未投与例は、小さな心筋梗塞で心機能正常例か、もしくは高K血症の傾向や重度の腎機能障害で投与を控えた症例、禁忌にも記載があるような重篤な疾患をお持ちの症例等につきましては投与をされていません。直接ARNIを投与している症例も増えてきています。
急性心筋梗塞患者における入院当日のアスピリン投与割合
計算方法
分子 |
入院当日にアスピリンが投与された症例数 |
分母 |
急性心筋梗塞で入院した症例数 |
指標の説明
- 急性心筋梗塞は、心臓の筋肉に栄養分や酸素を供給する冠動脈に血栓が生じることで心臓の筋肉細胞が壊死してしまう病気です。
- 日本循環器学会『急性冠症候群ガイドライン』では、退院後に病気が再発することを予防するために抗血栓薬(アスピリン等)、β遮断薬(βブロッカー)、脂質代謝異常改善薬(スタチン等)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンⅡ受容体阻害剤(ARB)等のうち、必要なものを投与することが推奨されています。
- アスピリンは、早期に投与するほど死亡率が低下することが臨床研究で示されており、アスピリンアレルギーのある患者を除き、急性心筋梗塞が疑われる全症例で発症直後から投与することが推奨されています。
急性心筋梗塞に対する処方薬
横にスクロールしてご覧ください。
|
効能/効果 |
禁忌 |
アスピリン |
・血小板凝集を阻害することにより、血栓・塞栓が形成されることを抑制する。 ・特に、冠動脈バイパス術あるいは経皮経管冠動脈形成術施行後での投与は重要である。 |
・出血傾向のある患者 ・消化性潰瘍のある患者 ・出産予定日12週以内の妊婦 ・非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作が誘発される恐れのある患者 |
考察
- 急性心筋梗塞症例に対しては全例(アスピリン喘息の既往、もしくは活動性出血のない限り)初日にアスピリンを投与しています。
急性心筋梗塞患者の病院到着後90分以内のPCI実施割合
計算方法
分子 |
来院後90分以内に手技を受けた症例数 |
分母 |
急性心筋梗塞で経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けた18歳以上の症例数 |
指標の説明
- 急性心筋梗塞(ST上昇型心筋梗塞:STEMI)の治療は、発症後可能な限り早期に再灌流療法(閉塞した冠動脈の血流を再開させる治療)を行うことが重要です。
- 発症後12時間以内は早期再灌流療法の適応とされ、主にバルーンやステントを使用した経皮的冠動脈形成術(PCI)が行われます。
- 病院到着(Door)からPCI(Balloon)までの時間を「Door-to-Balloon Time(DTBT)」と呼び、90分以内にPCIを実施した患者の割合を指標としています。
考察
- 昨年と本年度は、コロナ抗原のチェックやコロナ用にアンギオ室を整備するなどの待機時間が発生したことによりDoor To Balloon Timeが延長しています。コロナ流行の影響がまだみられています。
脳梗塞(TIA含む)患者のうち入院2日目までに抗血小板療法もしくは一部の抗凝固療法を受けた症例の割合
計算方法
分子 |
入院2日目までに抗血小板療法もしくは一部の抗凝固療法を受けた症例 |
分母 |
脳梗塞か一過性脳虚血発作(TIA)の診断で入院した18歳以上の症例数 (入院契機になった傷病名と医療資源を最も投入した傷病名の両方にICD-10コードのI63$とG45$が含まれるもの) |
除外 |
t-PA(血栓溶解)治療を受けた症例 |
指標の説明
- 脳卒中は、脳の血管が詰まる「脳梗塞(脳血栓症・脳塞栓症・一過性脳虚血発作)」と、脳の血管が破れて出血する「脳出血」「くも膜下出血」に分けられます。
- 脳梗塞とは、脳の血管が細くなったり、血管に血栓(血のかたまり)が詰まったりして、脳に酸素や栄養が送られなくなるために脳の細胞が障害を受ける病気です。
- 一過性脳虚血発作(TIA)とは、一時的に脳の血流が悪くなることにより、運動麻痺、感覚障害などの症状が現れるが24時間以内に回復するもので、脳梗塞の前兆といわれています。
- 日本脳卒中学会『脳卒中治療ガイドライン2021』では、脳梗塞が再発することを防止するために、発作から48時間以内に抗血小板薬(アスピリン)を経口投与(1日あたり160~300mg)することを強く推奨しています。
- ただし、脳血管に生じた血栓を溶解するt-PA治療を受けた場合は、24時間以内の抗血小板薬の投与は頭蓋内出血を増やす危険性があるため、日本脳卒中学会『静注血栓溶解(rt-PA)療法 適正治療指針 第三版』において禁忌とされており、本指標においても該当症例は除外しました。
考察
- 基本的に心原性脳塞栓症が疑われる症例に対しては、全例に対し入院初期にヘパリン等を含む抗凝固療法を実施しています。
脳梗塞(TIA含む)患者における抗血小板薬処方割合
計算方法
分子 |
抗血小板薬を処方された症例 |
分母 |
脳梗塞か一過性脳虚血発作(TIA)の診断で入院した18歳以上の症例数 (入院契機になった傷病名と医療資源を最も投入した傷病名の両方にICD-10コードのI63$とG45$が含まれるもの) |
除外 |
・在院日数が121日以上の症例 ・退院時に抗凝固薬を処方された症例 ・死亡退院症例 |
指標の説明
- 脳梗塞は、詰まる血管の太さやその詰まり方によって3つのタイプに分けられます。
(1) 比較的太い動脈に付着したコレステロールの固まりに血栓ができる「アテローム血栓性梗塞」
(2) 脳の細い血管での動脈硬化によって起こる「ラクナ梗塞」
(3) 心臓にできた血栓が流れてきて血管をふさぐ「心原性脳塞栓症」
- このうち心原性脳塞栓症以外の再発予防には、抗血小板薬の投与が推奨されています。
考察
- 抗血小板療法の適応患者さんは全例に抗血小板薬の処方を行っております。
- 未処方例は心原性脳塞栓症が疑われ、抗凝固療法を施行した場合や消化管出血等で抗血栓療法が禁忌の場合となります。
- 積極的な後方連携の促進を行っています。また、様々な症状や他施設での治療方針に応じて退院時の処方・持参薬管理等を引き続き行っております。
脳梗塞患者におけるスタチン処方割合
計算方法
分子 |
スタチンが処方された症例数 |
分母 |
脳梗塞で入院した症例数 (主傷病名と医療資源を最も投入した傷病名がICD-10コードのI63$) |
除外 |
・疑い病名の症例 ・死亡退院症例 |
指標の説明
- 日本脳卒中学会『脳卒中治療ガイドライン2021』では、脳梗塞の再発予防に脂質異常症のコントロールが推奨されています。また、高用量のスタチン系薬剤は脳梗塞の再発予防に有効であるとされています。
- スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)とは、コレステロールの合成速度を制御する薬剤のことで、スタチン系薬剤は脂質異常症の治療薬として世界中で広く使用されています。
考察
- ガイドラインに則り、LDL80以下を目標にスタチンを処方しています。
心房細動を合併する脳梗塞(TIA含む)患者への抗凝固薬の処方割合
計算方法
分子 |
抗凝固薬を処方された症例 |
分母 |
脳梗塞か一過性脳虚血発作(TIA)の診断で入院し、かつ心房細動と診断された18歳以上の症例数(入院契機になった傷病名と医療資源を最も投入した傷病名の両方にICD-10コードのI63$とG45$が含まれ、かつ心房細動I48$と診断されたもの) |
除外 |
・在院日数が121日以上の症例 ・死亡退院症例 |
指標の説明
- 心房細動は、心臓の拍動が乱れ血液が心臓内に停滞する状態のことです。心房細動は高齢者に多く見られ、心房細動がある人はない人に比べて脳梗塞を発症しやすくなります。
- 心房細動が原因で心臓にできる血栓は比較的大きく、それが血流によって脳に運ばれると脳の太い血管をふさぎ、脳梗塞(心原性脳塞栓症)が起こります。脳が受けるダメージの範囲は広く、死亡率や重度の後遺症が残る可能性が高くなります。
- 日本脳卒中学会『脳卒中治療ガイドライン2021』では、弁膜症を伴わない心房細動のある脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)患者さんの再発予防として、原因となる血栓ができないよう血液凝固因子に作用して血栓を防ぐワーファリン等の抗凝固薬を処方することを推奨しています。
考察
- 心房細動を合併する脳梗塞症例について、原則全例に抗凝固薬を処方しています。
- 消化管出血など禁忌項目のある患者さんが投与対象外となります。
脳梗塞における入院後早期リハビリ実施症例の割合
計算方法
分子 |
入院後早期(3日以内)に脳血管リハビリテーション治療を受けた症例 |
分母 |
脳梗塞の診断で入院した18歳以上の症例 |
除外 |
7日以内の死亡退院症例 |
指標の説明
- 安静臥床が長期化すると、筋萎縮・筋力低下、関節拘縮(関節を動かさないことにより次第に関節の動く範囲が狭くなった状態のこと)等の症状があらわれる廃用症候群が起こります。
- 日本脳卒中学会『脳卒中治療ガイドライン2021』では、廃用症候群を予防し早期の日常生活動作の向上と社会復帰を図るために、十分なリスク管理のもとにできるだけ発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことを強く勧めています。
- 『脳卒中治療ガイドライン2021』によると、入院後3日以内にリハビリテーションを開始した群は3日以上経ってからリハビリテーションを開始した群に比べて入院期間が短く、退院時の歩行状態が良かったとされています。
考察
- 脳血管リハビリテーションを入院後3日以内に実施した症例数の割合は、重症患者も多く低い傾向です。
シスプラチンを含むがん薬物療法後の急性期予防的制吐剤の投与
計算方法
分子 |
化学療法実施日の前日または当日に、5HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの3剤すべてを併用した数 |
分母 |
18歳以上の症例で、入院にてシスプラチンを含む化学療法を受けた、実施日数 |
除外 |
リンパ組織、造血組織及び関連組織の悪性新生物 |
指標の説明
- 日本癌治療学会『制吐薬適正使用ガイドライン』では良好な治療アドヒアランスを得て化学療法を円滑に進めるために、催吐リスクに応じた予防的な制吐剤の使用を推奨しています。高度の抗がん薬による急性の悪心・嘔吐に対しては、NK1 受容体拮抗薬と 5HT3 受容体拮抗薬およびデキサメタゾンを併用することが推奨されています。
- シスプラチンは「高度催吐性リスク」に分類されており、本指標では、この 3 剤の制吐剤が使用されているかどうかを測定しています。
考察
- 当科ではシスプラチンを投与された全症例において、ガイドラインを遵守した制吐剤が適切に投与されており、安心・安全な化学療法が日々遂行されています。
喘息入院患者のうち吸入ステロイドを入院中に処方された割合(15歳以上)
計算方法
分子 |
入院中に吸入ステロイド薬の処方を受けた症例数 |
分母 |
喘息を原因とする15歳以上の入院症例数 |
指標の説明
- 気管支喘息は、気管支に炎症が続き、さまざまな刺激に敏感になり、空気の通り道が狭くなる病気です。喘息の炎症の多くはダニやハウスダスト、花粉、ペットのフケなど、日常生活のありふれた物質に対するアレルギーが関わっています。
- 喘息の治療薬は、喘息症状を軽減・消失させ肺機能を正常化しその状態を維持させる長期管理薬(コントローラー)と、発作時に短期間使用する発作治療薬(レリーバー)の2種類に分けられます。
・長期管理薬(コントローラー):吸入ステロイド薬、長期作用型の気管支拡張薬、抗アレルギー薬
・発作治療薬(レリーバー):経口ステロイド薬、短時間作用する気管支拡張薬
- 吸入ステロイド薬は長期管理薬のひとつで、アレルギー性炎症に対する最も強い薬剤です。経口薬よりも全身への副作用が少ないため、吸入薬が用いられます。喘息の状態を軽症から重症までの4ステップに分類し、それぞれの段階に応じて低用量から高用量で投薬すべきとされています。
- 吸入ステロイド薬を長期に高用量使用した場合の全身への影響は、副腎皮質の抑制や骨代謝の抑制の報告があります。経口薬より副作用は少ないとしても長期の影響について注意深く検討する必要があります。
考察
- 入院中に処方されなかった成人の患者さんは、自宅に薬がある場合や、患者さんの希望により吸入ステロイド薬と同様の効果がある薬剤で適切な治療を行っています。
喘息入院患者のうち吸入ステロイドを入院中に処方された割合(5歳から14歳)
計算方法
分子 |
入院中に吸入ステロイド薬の処方を受けた症例数 |
分母 |
喘息を原因とする5歳から14歳の入院症例数 |
指標の説明
- 気管支喘息は、気管支に炎症が続き、さまざまな刺激に敏感になり、空気の通り道が狭くなる病気です。喘息の炎症の多くはダニやハウスダスト、花粉、ペットのフケなど、日常生活のありふれた物質に対するアレルギーが関わっています。
- 小児気管支喘息は成人気管支喘息とは異なる特性があることから、日本小児アレルギー学会が『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020』を作成しています。
- 吸入ステロイド薬はアレルギー性炎症に対する最も強い薬剤です。小児気管支喘息においては、成人気管支喘息とは異なる推奨薬剤が示されており、必ずしも吸入ステロイド薬を優先的に用いることとはされていません。
- 吸入ステロイド薬を長期に高用量使用した場合の全身への影響は、副腎皮質の抑制や骨代謝の抑制の報告があります。経口薬より副作用は少ないとしても長期の影響について注意深く検討する必要があります。
考察
- ガイドラインに則って中発作以上の症例に入院加療を考慮しています。
- 吸入ステロイドは急性増悪時の増量はガイドラインで勧められていません。一方、ステロイドの全身投与は急性増悪時の症状改善に効果が報告されています。当院の入院中の吸入ステロイド使用率がQIプロジェクトに比して低い要因はかかりつけより紹介されての入院が多く、一般的な集団に比べ、①ステロイドの全身投与の適応となる重症例が多いこと。②吸入ステロイドは近医で処方済みであることを考えます。
小児喘息に対して入院中にステロイドの全身投与(静注・経口)を受けた症例の割合
計算方法
分子 |
入院中にステロイドの全身投与(静注・経口処方)を受けた症例数 |
分母 |
喘息に関連した疾病で2歳から15歳の入院症例 |
指標の説明
- 気管支喘息は、気管支に炎症が続き、さまざまな刺激に敏感になり、空気の通り道が狭くなる病気です。喘息の炎症の多くはダニやハウスダスト、花粉、ペットのフケなど、日常生活のありふれた物質に対するアレルギーが関わっています。
- 小児気管支喘息は成人気管支喘息とは異なる特性があることから、日本小児アレルギー学会が『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020』を作成しています。
- 日本小児アレルギー学会『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020』では、急性発作時の医療機関での対応について、家庭での対処状況を把握した上で発作強度を評価し、中発作は外来治療、大発作と呼吸不全は入院治療で対応することとしています。
- 中発作ではβ2刺激薬等気管支拡張作用を持つ薬剤では対応できない場合に、大発作と呼吸不全では初期段階から、経口・静注ステロイドの投与が標準的治療として示されています。ステロイドの全身投与は、呼吸困難が改善したら中止し、できる限り短期の使用にとどめることとされています。
考察
- ガイドラインに則って中発作以上の症例に入院加療を考慮しています。
- ステロイドの全身投与(静注)は急性憎悪で症状改善に効果が報告されています。当院の入院中のステロイド全身投与割合がQIプロジェクトに比して高い要因は①当院のデータは静注と経口ステロイドを合わせたデータであり、統計として有意と言い切れないこと。②かかりつけより紹介されての入院が多く、一般的な集団に比べ重症例が多い可能性があることを考えます。
- 今後もガイドラインに則って発作強度や症例改善の程度を評価し漫然と投与せずに必要十分な期間において全身性ステロイド薬を使用することを念頭に置き治療していきます。
紹介割合・逆紹介割合
計算方法
分子 |
紹介割合:紹介患者数+救急患者数 逆紹介割合:逆紹介患者数 |
分母 |
紹介割合:初診患者数 逆紹介割合:初診患者数+再診患者数 |
除外 |
初診の平日救急搬送患者数及び休日・夜間の初診救急患者数 |
指標の説明
- 紹介割合とは、初診患者のうち他の医療機関から紹介されて来院した患者さんと救急患者さんの割合です。
- 逆紹介割合とは、初診患者及び再診患者さんのうち他の医療機関へ紹介した患者さんの割合です。
- 大きな病院に患者さんが集中することを避けるため、症状が軽い場合は「かかりつけ医」を受診してもらい、そこで必要と判断された場合に紹介受診してもらう、そして治療を終え症状が落ち着いたらまた「かかりつけ医」で経過観察をしてもらうことで、地域の医療連携を強化し、切れ目のない医療の提供を行うことができます。
- 市民病院は、平成18年9月に「地域医療支援病院」として承認されており、初診については地域医療機関からの紹介を推進しています。
考察
- 令和4年度は前年度と比較して、紹介割合は4.6ポイント増、逆紹介割合は19.8パーミル減となっています。
- 個々の診療科特性を踏まえた地域医療機関との連携推進を図り、紹介患者増および紹介割合増を目指します。また、初診時紹介予約制、初診時紹介制を5診療科で新たに導入するなどの変更について広く周知を図ります。
- 高度急性期病院として地域完結型医療を目指し、院内LANを活用し、逆紹介の推進と返書作成の徹底について医師への周知を図ります。
救急車・ホットラインの応需率
計算方法
分子 |
救急車で来院した患者数 |
分母 |
救急車受け入れ要請人数 |
除外 |
他院からの搬送(転送)件数 |
指標の説明
- 救急車・ホットライン応需率は、救急医療の機能を測る指標であり、救急車受け入れ要請のうち、何台受け入れができたのかを表しています。
- 当院の救命救急センターは高度な三次救急医療に特化するのではなく、従来の救急センター(ER)と同様に初期から三次までの救急症例を対象とした「ER型救命救急センター」を目指しています。
考察
- 応需率を高めるための取り組みとして、「救命救急センター運営委員会」において、応需、お断りについての情報共有を行い、救急患者の受け入れについて課題解決に向けた検討を行いました。
- 救急患者を受け入れるためのICU・HCU病棟においては、退室患者の決定及び退室候補患者の退室順を決定し、入院を必要とする患者さんが随時・適切に入室できるようにベッドコントロールを実施しています。
- 救急車の受け入れ件数は前年度と比較すると1,464件増加しましたが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い一般病棟の感染症病棟への転用や病棟閉鎖を実施したこと、また、感染症が疑われる患者さんの隔離のためにHCU病棟を使用したことで、適応ベッド満床による応需不能が発生し、応需率は目標の93%を下回る81.3%となりました。
統合指標【手術】
計算方法
分子 |
下記の指標の分子の合計 ●特定術式における手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率 ●特定術式における術後24時間(心臓手術は48時間)以内の予防的抗菌薬投与停止率 ●特定術式における適切な予防的抗菌薬選択率 |
分母 |
下記の指標の分母の合計(除外は各指標に準ずる) ●特定術式における手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率 ●特定術式における術後24時間(心臓手術は48時間)以内の予防的抗菌薬投与停止率 ●特定術式における適切な予防的抗菌薬選択率 |
指標の説明
- 統合指標【手術】とは、
「特定術式における手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率」
「特定術式における術後24時間(心臓手術は48時間)以内の予防的抗菌薬投与停止率」
「特定術式における適切な予防的抗菌薬選択率」
以上の指標値を合算して、手術における予防的抗菌への取組みについて総合的に評価する指標です。
統合指標【虚血性心疾患】
計算方法
分子 |
下記の指標の分子の合計 ●急性心筋梗塞患者における入院当日のアスピリン投与割合 ●急性心筋梗塞患者におけるアスピリン投与割合 ●急性心筋梗塞患者におけるβブロッカー投与割合 ●急性心筋梗塞患者におけるスタチン投与割合 ●急性心筋梗塞患者におけるACEIもしくはARBの投与割合 ●急性心筋梗塞患者の病院到着後90分以内のPCI実施割合 |
分母 |
下記の指標の分母の合計(除外は各指標に準ずる) ●急性心筋梗塞患者における入院当日のアスピリン投与割合 ●急性心筋梗塞患者におけるアスピリン投与割合 ●急性心筋梗塞患者におけるβブロッカー投与割合 ●急性心筋梗塞患者におけるスタチン投与割合 ●急性心筋梗塞患者におけるACEIもしくはARBの投与割合 ●急性心筋梗塞患者の病院到着後90分以内のPCI実施割合 |
指標の説明
- 統合指標【虚血性心疾患】とは、
「急性心筋梗塞患者における入院当日のアスピリン投与割合」
「急性心筋梗塞患者におけるアスピリン投与割合」
「急性心筋梗塞患者におけるβブロッカー投与割合」
「急性心筋梗塞患者におけるスタチン投与割合」
「急性心筋梗塞患者におけるACE阻害剤もしくはアンギオテンシンⅡ受容体阻害剤の投与割合」
「急性心筋梗塞患者の病院到着後90分以内のPCI実施割合」
以上の指標値を合算して、心筋梗塞の患者さんに対しての取組みについて総合的に評価する指標です。
統合指標【脳梗塞】
計算方法
分子 |
下記の指標の分子の合計 ●脳梗塞(TIA含む)の診断で入院し、入院2日目までに抗血小板療法あるいは一部の抗凝固療法を受けた症例の割合 ●脳梗塞(TIA含む)の診断で入院し、抗血小板薬を処方された割合 ●脳梗塞患者のスタチン処方割合 ●心房細動を合併する脳梗塞(TIA含む)患者への抗凝固薬の処方割合 ●脳梗塞における入院後早期リハビリ実施症例の割合 |
分母 |
下記の指標の分母の合計(除外は各指標に準ずる) ●脳梗塞(TIA含む)の診断で入院し、入院2日目までに抗血小板療法あるいは一部の抗凝固療法を受けた症例の割合 ●脳梗塞(TIA含む)の診断で入院し、抗血小板薬を処方された割合 ●脳梗塞患者のスタチン処方割合 ●心房細動を合併する脳梗塞(TIA含む)患者への抗凝固薬の処方割合 ●脳梗塞における入院後早期リハビリ実施症例の割合 |
指標の説明
- 統合指標【脳梗塞】とは、
・「脳梗塞(TIA含む)の診断で入院し、入院2日目までに抗血小板療法あるいは一部の抗凝固療法を受けた症例の割合」
・「脳梗塞(TIA含む)の診断で入院し、抗血小板薬を処方された割合」
・「脳梗塞患者のスタチン処方割合」
・「心房細動を合併する脳梗塞(TIA含む)患者への抗凝固薬の処方割合」
・「脳梗塞における入院後早期リハビリ実施症例の割合」
以上の指標値を合算して、脳梗塞の患者さんに対しての取組みについて総合的に評価する指標です。
職員におけるインフルエンザワクチン接種率
計算方法
分子 |
インフルエンザワクチンを予防接種した職員数 |
分母 |
職員数 |
指標の説明
- 入院中の患者さんは易感染状態であることが多いため、職員がインフルエンザを院内に持ち込んで感染を広げることがないようワクチンを接種しておくことが必要です。
考察
- 年度内に院内で接種を希望する職員全員分のワクチンを確保し、接種することができました。
入院患者MRSA感染率【独自指標】
計算方法
指標の説明
- メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、病院内で感染拡大しやすい薬剤耐性菌の代表的なものです。病院での感染対策が徹底されると、この数字が低下していくと考えられます。
考察
- 感染率に大きな変化はありません。感染事例の多くが持込みであり、引き続き入院時から症状がある患者さんへの感染対策を徹底します。
臨床研修【独自指標】
※1 初期臨床研修医数には、 当院と協力病院で1年ずつ研修を行う「たすきがけ研修医」を含む
※2 臨床研修指導医数は、厚生労働省が定めた「医師の臨床研修に係る指導医講習会」の修了者数
医師臨床研修制度とは
- 医師臨床研修制度とは、診療に従事しようとする医師が指定の病院で二年以上の臨床研修を受けなければならない制度です。
当院は厚生労働省から指定を受けた協力型臨床研修病院として臨床研修を実施しています。
当院の臨床研修について
- 初期臨床研修医1人に対して1人以上の厚生労働省指定研修を修了した臨床研修指導医が、患者数が多く研修機会が多い診療科には概ね配置されており、今後も行き届いた指導体制がとれるように指導医の増員に取組んでいます。
- 厚生労働省で必修とされている内科・救急・地域医療に加えて、外科・麻酔科・小児科研修も必修としており、より幅広く基本的な診療能力を修得できる体制となっています。
- 地域がん診療連携拠点病院に指定されており、外来化学療法室やPET-CT、緩和ケア病棟、がん相談支援センターなどで、総合的ながん診療の経験を積めるように配慮しています。
- 第一種感染症指定医療機関になっていることから、抗生剤の使い方やHIV、マラリア、デング熱などの感染症にも習熟できるようになっています。
- 救急医療の最前線で患者対応能力を高めるとともに、様々な疾患の診療を経験するため、重症度の低い患者さんの初期対応をまず1年目の研修医が行い、その指導には2年目の研修医及び救急専門医があたるようにしています。重症度の高い急患の対応は、救急専門医とともに行います。