私達、市民病院の薬剤師が目指すものは医療安全への貢献です。
薬剤師による患者さんに対する医療安全とは、薬物療法による有害反応(事象)のない適正な治療を遂行できるように医師や看護師等を支援することです。そのためには、薬剤師は患者さんに関する情報や治療のための情報に対して、適切な薬学的なモニタリングや判断できるスキルを習得し、有害反応の回避、必要な医薬品情報の提供等を迅速に行う必要があります。
また、薬剤師の役割は医薬品の情報提供に留まらず、院内で展開されている多くのチーム医療への貢献も求められています。私達の役割は多面的であるため、様々なチームに参画し、シームレスな関係を築き、共に活躍して行くことが必要とされます。
医療へ貢献できる薬剤師は未来永劫、自己研鑽を続けなければなりません。更に、ジェネラリストとしての幅の広さ、厚みが求められます。合わせて、個人を支える仲間、ハードとソフトの両面の仕事環境がとても大切です。
当院は薬剤師としての生涯教育環境を整え、ジェネラリストからエキスパート薬剤師への支援、仕事の効率・バランスを考慮した部門システムの導入、さらに女性が生涯従事できる環境を整えています。
現在は、新病院への準備を進めるとともに薬剤部内の業務改革を行い、「今できることは今やる。」「薬剤師だけでなく他の医療職種と協働することで、医療の効率・安全が図れることがないか。」などを検討しています。
私達は今後も、日々の研鑽を進めるとともに医療安全への貢献、適正な薬物療法・標準薬物療法及びプレアボイドの推進、健全な病院経営への貢献等を果たし、横浜市立の病院として、市民の皆様へ安全で良質な医療を公平、公正に提供してまいります。
薬剤部長 髙橋 賢成
常勤薬剤師35名、非常勤薬剤師4名、業務補助者3名、委託のSPDスタッフ10名で運営しています。夜間および休日は薬剤師1名以上を配置し、日直・当直業務を行っています。
主に入院患者さんを対象とした内服剤の調剤を行っています。ご自身で薬を管理できない患者さんに対しては、間違って服用してしまうことを避けるため、専用の与薬カートに薬をセットして、各部署に供給しています。
外来は、原則院外処方としており、院外処方せん発行率は95%以上になっています。例外として、夜間休日や特殊な薬剤を使用している患者さんに対しては、病院内で調剤を実施しています。
採用医薬品は多数の取引業者から納品を受けており、発注から検品、適正在庫および安定供給が実施できるよう管理に務めるとともに、院内を巡回し、各部署、各部門の配置医薬品の使用期限、配置場所、在庫状況等の確認を行っています。各部署の配置薬は全て登録し、医薬品の適正使用および適正管理の推進に取り組んでいます。
また、平成21年からは手術室の麻薬および向精神薬等についても薬剤師による管理を実施しています。
在庫数は、災害拠点病院に求められている1週間としています。
入院患者さんの注射剤は、患者さんごとにセットし、各部署に専用カートで供給しています。
高濃度カリウム製剤など危険度の高い注射剤や配合変化等に注意する注射剤については、情報紙を添付し、医療スタッフに向け注意喚起をしています。
高カロリー輸液は、薬剤部内の無菌製剤室で薬剤師により混合調製を行っています。無菌操作のほか、配合変化等に注意し、調製しています。
抗がん剤は、薬剤部内の抗がん剤調製室にて混合調製しています。入院患者さんの抗がん剤は、休日も混合調製を実施しています。
平成27年8月から入院患者さんに対して薬の効果、副作用、相互作用のチェックなどを行っています。
平成22年から開始した患者さんの持参薬鑑別業務は、現在、予定入院患者さんに対して100%実施しています。薬剤師が鑑別を行った後、医師と協議し、持参薬使用の有無を決定しています。また、医師や看護師などの医療スタッフと連携を取りながら、安全で効果的な薬物療法が行えるよう処方の提案をしています。
抗がん剤の投与は登録された化学療法レジメンに基づいて実施しています。適正な治療が行われるように抗がん剤の投与量、投与スケジュール等を確認・管理しています。化学療法レジメンの登録は「がん診療部会」で審議を行いますが、薬剤師が参画し、その科学的根拠等を確認して、安全な化学療法を推進しています。
院内スタッフへの医薬品情報提供、副作用事例の収集等を行っています。また、薬事委員会事務局として院内医薬品の採用等に関わっています。医薬品の採用においては、経営の観点から、1増1減を原則とし、採用医薬品数の抑制を行い、ジェネリック医薬品への切り替えを推進しています。ジェネリック医薬品への切り替え率は現在、85%を超えています。また医療安全への取り組みとして、名称が類似していないか、包装等の外観が類似していないか等も検討しています。
薬に関する質問は気軽に寄せていただけるよう「日本一敷居の低い医薬品情報管理室」を目指しています。
製造物責任法(PL法)により、以前は院内で製剤化していた「薬」の多くが市販されるようになりました。しかし、治療上必要とされる「薬」は全て市販されているわけではありません。このような「薬」は院内の倫理委員会や薬事委員会で承認後、調製し供給することになります。滅菌を必要とする「薬」は施設内の滅菌器等を使用し、外部の機関に検査を依頼して「パイロジェンフリー(発熱性物質がないこと)」であることを確認しています。
疼痛緩和医療の進歩に合わせ、オピオイド性鎮痛薬の院内採用数、使用量ともに年々増加しています。「麻薬及び向精神薬保管管理規定」に基づき厳格な管理を行っています。部署を限定(手術室等)し、麻薬製剤の部署配置も実施しており、薬剤師による管理を行っております。
臨床試験支援室のスタッフと協力しながら、治験薬の管理、供給を通じて臨床試験を支援しています。
医薬品のマスタ管理を通じて医療情報システム運用に関与しています。システムを活用した医薬品使用に関する注意喚起の実施、医薬品名称の表示方法への工夫を行い医療安全向上に取り組んでいます。
患者さんの入院前面談を行い、服薬状況や副作用歴などを確認しています。特に、手術・検査を予定している患者さんの抗凝固薬、抗血小板薬、低用量ピル等の服用の有無、休薬指示の有無が重要な確認事項になっています。
PFM : patient flow management
薬学生の「長期実務実習」を実施しており、年間10名程度の学生を受け入れています。また平成24年度からは「HIV 感染症薬物療法認定薬剤師養成研修施設」として、年間数名の研修生を受け入れています。
実務の中から、安全で良質な医療を提供することを目的に、スタッフによる調査・研究が実施されています。例年その成果を各種学会にて報告しています。
業務統計(平成28年度実績) | 専門・認定薬剤師取得状況 | ||
外来処方箋枚数(院内) | 8,939枚/年 | 日本薬剤師研修センター認定薬剤師 | 11名 |
入院処方箋枚数 | 149,578枚/年 | 認定実務実習指導薬剤師 | 7名 |
院外処方箋枚数 | 150,583枚/年 | 日本医療薬学会認定薬剤師 | 1名 |
院外処方箋発行率 | 94.1% | 日本医療薬学会指導薬剤師 | 1名 |
注射処方箋枚数 | 305,143枚/年 | がん薬物療法認定薬剤師 | 2名 |
注射薬無菌調製件数(TPN) | 2,808件/年 | 小児薬物療法認定薬剤師 | 1名 |
抗がん剤混合調製件数(入院) | 5,517件/年 | HIV感染症薬物療法認定薬剤師 | 1名 |
抗がん剤混合調製件数(外来) | 5,309件/年 | 糖尿病療養指導士 | 2名 |
薬剤管理指導算定件数 | 15,277件/年 | NST専門療法士 | 3名 |
麻薬管理指導加算 | 784件/年 | 緩和薬物治療認定薬剤師 | 1名 |
退院指導件数 | 1,141件/年 | リウマチ登録薬剤師 | 1名 |
漢方薬・生薬認定薬剤師 | 2名 | ||
スポーツファーマシスト | 2名 | ||
サプリメントアドバイザー | 1名 | ||
医療情報技師 | 1名 | ||
DMAT隊員 | 1名 |
・ICT(感染対策チーム) | ・RST(呼吸療法サポートチーム) |
・NST(栄養サポートチーム) | ・緩和ケアチーム |
・がん診療サポートチーム | ・褥瘡ケアチーム |
・精神科リエゾンチーム | ・摂食・嚥下チーム |
・認知症ケアチーム | ・排尿ケアチーム |
慶應大学、北里大学、共立薬科大学、昭和薬科大学、昭和大学、千葉大学、東京薬科大学、東北薬科大学、星薬科大学、明治薬科大学、東京理科大学、帝京大学、帝京平成大学、横浜薬科大学、武蔵野大学、日本薬科大学、ウルグアイ、ブラジル、ペルー、パプアニューギニア、ガーナ、レソト、スワジランド
市民病院薬剤部:by-phinfo@city.yokohama.jp[お急ぎの方は実務実習担当(045-331-1961:内線1130)]に施設見学等についてお問い合わせ下さい。
「院外処方せんにおける疑義照会プロトコール」を設定しました。本件の運用につきましては、「合意書」の締結が必要となります。