市民病院で活躍するさまざまな職種のスタッフにフォーカスし、その人柄や医療にかける思いに迫る本企画。今回登場するのは、脳神経内科長の工藤洋祐医師です。
幼少期は引っ込み思案で泣き虫な子どもで、よく漫画を読んだりゲームをしたりして遊んでいました。どちらかというと算数や理科が得意でしたが、特別に勉強熱心というわけではなかった気がします。
私が医師になったのは、今は亡き父の影響がとても大きいですね。父は薬学の研究者で、熱心に仕事に向き合う背中を見て、医療における「薬の力」を子ども心に感じていました。そんなこともあり、薬学や医学に自然と興味が沸いてきて、将来は研究者か医師になりたいと考えるように。高校生の時に「自分には直接患者さんと接する方が向いているな」と思い、医師を目指すことに決めました。父は多忙な人だったので、生前に聞くことはかないませんでしたが、ふと「父も医師を志したことがあったのかな?」などと考えることもあります。
進学した横浜市立大学医学部は、当時1学年が60人ほどの少人数制だったこともあり、皆と親しくなれて学びやすい環境でした。さらに、医学部以外の学生とも交流を持ちたいと考えて、高校時代から続けていたハンドボール部に入部。学外ではレンタルビデオ店でのアルバイトにも精を出して、貴重な社会経験を積みました。今でも大学時代の仲間とは親交があり、会うと元気をもらえる存在です。
大学の授業で、とりわけ関心を抱いたのが神経学です。人間は、脳や神経の働きによって体を動かしたり、感覚を得たりすることができます。ところが、これらのシステムのどこかにトラブルが起きると、頭痛、めまい、しびれや痛みなどの症状が現れるなどして、日常生活に支障が出てしまうのです。研修医となり、実際に患者さんの診療を担うようになった時、医学部で培った神経学の知識がどれほど役立つかを実感しました。また、難病の方や後遺症を抱える方に関わる機会も多い領域であると知り、医師としてそうした患者さんの痛みやつらさに寄り添うことに魅力を感じ、現在の道を選びました。
私が日々、多く接する疾患の代表が「脳卒中」です。脳卒中が起こる原因はさまざまで、トラブルが起こった場所によっても症状が異なるので、診療においては患者さんの「小さな訴え」も見逃さない姿勢が大事です。患者さんが感じていることにしっかりと耳を傾けて、適切な検査につなげることで、病巣を突き止めていくイメージです。神経は体中の臓器と結び付いていますが、高い関連性を有する症状の一つが「見え方」です。物が二重に見える、視野が欠けるなどの異常が現れた際、実は脳や神経に原因があるケースも少なくありません。
時代とともに医学の研究が進むにつれて、人体の構造や機能は次第に明らかになっています。一方で、脳については未知の部分が多く残されていることも事実。だからこそ、患者さんの診療後も「薬を処方して終わり」という感覚でなく、症状や要因についてより詳しく調べたり、折に触れて検討を重ねたりして、深く学ぶ姿勢を大切にしています。前任地の病院での経験や、熱意を持って指導してくださる先輩から教わったことが糧となり、今の診察スタイルにつながっています。
市民病院には2024年4月に入職したばかりで、脳神経内科の科長として勤務しています。外来診療、病棟診療、救急診療に携わることはもちろん、若い医師の教育や地域の医療従事者との連携にも力を入れています。当院は規模が大きく、多岐にわたる診療科がそろっているため、幅広い病態の患者さんと接する機会があります。合併症や悪性疾患などを抱える方にも適切な治療を提供できることに、大きなやりがいを感じますね。また、院内でも脳神経内科はとりわけ歴史が深く、これまでも素晴らしい知見を持った医師が多数活躍してきました。脳や神経の症状に悩んだ時の「駆け込み寺」として、今後も地域の皆さんに頼りにしてもらえるよう、貢献していきたいです。
脳神経内科の領域は驚くようなスピードで進歩しており、疾患ごとの治療法や薬の種類について、選択肢がどんどん増えています。適切な診断と治療のために、これからもたゆまず学びを継続していく覚悟です。ささいなことでも構わないので、しびれ、めまい、平衡感覚の異常など気になる症状がありましたら、気軽にご相談ください。
(2025年2月掲載)
工藤 洋祐(くどう・ようすけ)脳神経内科⻑
横浜市立大学医学部を卒業後、横浜市立脳卒中・神経脊椎センターなどで経験を積む。2024年4月、横浜市立市民病院に脳神経内科⻑として入職。専門は、脳神経内科全般、脳卒中、神経眼科。神経疾患の急性期から慢性期まで、幅広い診療を担う。趣味は音楽鑑賞で、外出先でふらりとレコードショップに立ち寄ることも。
休診日
土曜、
日曜、国民の祝日、
年末年始(12月29日〜
1月3日)
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