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神奈川県横浜市神奈川区三ツ沢西町1-1

生を受けた市民病院で、対話重視の医師としてさらなる成長を

嶋田 和博 (乳腺外科長/ブレストセンター長)

市民病院で活躍するさまざまな職種のスタッフにフォーカスし、その人柄や医療にかける思いに迫る本企画。今回登場するのは、乳腺外科の科長であり、ブレストセンター長も務める嶋田医師です。

医師である父の手術を受け「医療の力」を体感

ここ市民病院で生まれ、幼少期は横浜で育ちました。この病院や土地には人並み以上に愛着があり、今こうして医師として働いていることにも、運命的なものを感じます。小学校から高校までは、父の仕事の関係で福井県へ。体を動かすことが大好きな子どもで、田舎らしい自然豊かな環境でのびのびと生活していました。

医師を志したきっかけの一つに、消化器外科の医師だった父の存在があります。小学生の頃、病気で手術を受けなければならないことがあったのですが、父が執刀医を務めてくれました。そして、子供なりにも医療の大きな力を体感し、自分もいつか医師として活躍してみたいと考えるようになったのです。誰かに何かを説明して「なるほど!分かった!」と言ってもらうことが好きなタイプで、教師にも憧れがありましたが、人に教える機会は医師になっても多いと知り、やはりこの道を選ぶことにしました。

また、子ども時代にアレルギー体質だったことも、医師としての自己形成に影響していると思います。小麦、大豆、牛乳、卵といった食品をまったく受けつけないため、給食はもちろん食べられず、毎日母の作るお弁当を持って登校していました。周囲のみんなと同じように生活できず、悲しい思いをすることもたくさんありましたが、家族に支えられて何とか乗り切ることができました。こうした経験は、医師として患者さんの気持ちを理解することに今でも役立っているように感じます。

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高校卒業後は、医学部へ進学。軽音楽部での活動があまりにも楽しくて音楽に熱中する毎日でしたが、学年が上がるにつれて勉強にも注力するようになり、無事に卒業することができました。

患者さんとの対話が重要な乳腺外科を選択

乳腺外科では、乳がんをはじめとする乳房の疾患を診療対象としています。私がこの領域を選んだのは、患者さんとのコミュニケーションが極めて重要であり、自分の特性を最大限に発揮できると思ったからです。

乳がんの患者さんは40~50歳代の女性が中心で、育児、家事、仕事などで忙しい、働き盛りの方が多くを占めます。家族との関係や社会で担っている役割なども踏まえて治療を提案する必要があり、対話を通してその人ならではの課題に挑む姿勢が強く求められるわけです。患者さんの話を傾聴する、さまざまなアドバイスや提案で納得してもらうといったプロセスが好きな私にとって、相性のいい診療科だと感じました。また、乳がんは日本人女性に最も多いがんですが、その割に専門医が多くありません。需要が高く、大いに社会貢献できる点にも魅力を感じました。

私は、当院に来る前は茅ヶ崎市の病院に勤めていました。そこで印象に残っているのは、化学療法室(外来で抗がん剤治療を行う部屋)をゼロから立ち上げたプロジェクトです。2~3時間という短くない時間、点滴を受けながら過ごす場所なので、患者さん目線に立って快適な環境を追求。建築士とも相談し温かみがありリラックスできる照明や壁紙の色、コンセントや鏡、ハンガーの位置にまで気を配りました。携帯で当たり前のように音楽や映画を楽しみ、パソコンで仕事もできるようWi-Fiを完備し、治療中も自分らしく時間を過ごせるようにしました。「来院される地域の患者さんのために」という思いは、現在に至るまで大切にしていることの一つです。

「素人感覚」を忘れず、一人ひとりに向き合い続けたい

2023年に市民病院へ入職してからは、乳腺外科で管理職を務める他、ブレストセンターのセンター長も兼任しています。このセンターでは、乳がんをはじめとした乳腺疾患に対し、多職種チームで診療を実施。定期的に多職種でカンファレンスを開催して、領域横断的に治療に臨んでいます。細やかな配慮が大切な乳がん治療だからこそ、一人ひとりの目標を的確に共有して、そこに全スタッフで向かっていける体制は欠かせません。その人の人生をよりよくするための「トータルサポート」こそが、私たちの役割なのです。

市民病院は、新しく快適な院内環境やアクセスのよさはもちろんのこと、医療設備も充実していますので、高度かつ安全な医療を提供することは大前提となります。そこからさらに「いかに人や地域を支えるか」という点でより高みを目指すことが大切な目標だと考えています。乳がん治療についても、遠方にある高名な病院を訪れなくても、当院で同レベルの医療が十分に受けられることをもっと広めていきたいです。

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長らく医師として働いてきましたが、ずっと意識してきたのは、よい意味で「素人感覚」を失わないこと。病気だけに注目し専門用語を並べて患者さんに上から話をするような姿勢ではなく、あくまでも説明を受ける患者さんの立場になって平易で共感できる言葉をえらび、ゆっくりと信頼を深めながら接することを心掛けてきました。これからも、乳がん治療に際して不安を抱える患者さんに心からの対話や説明を尽くし、多面的に人生をサポートしていきたいです。

プロフィール

嶋田 和博(しまだ・かずひろ)乳腺外科 科長 部長/ブレストセンター長

横浜市立大学附属市民総合医療センター病院や茅ヶ崎市立病院などで勤務し、2023年に市民病院に入職。大学の頃は軽音学部に所属しており、現在もギターやピアノを演奏して楽しむ他、自身で楽曲制作も嗜む。好きなアーティストはマーティン・ギャリックス、Mr.Children、サザンオールスターズ。

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