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子宮筋腫とは

子宮筋腫は基本的には良性の腫瘍ですから、それ自体が生命を脅かすものではありません。女性ホルモンによって筋腫は大きくなり、閉経後は逆に小さくなることが多いです。複数個できることが多く、数や大きさはさまざまです。大きさやできた場所によって症状が違ってきます。できた場所によって、子宮の内側(粘膜下筋腫)、子宮の筋肉の中(筋層内筋腫)、子宮の外側(漿膜下筋腫)に分けられおり、部位やサイズにより様々な症状がでます。

(出典「公益社団法人 日本産科婦人科学会」
ホームページ)

症状

代表的な症状は月経量が多くなることと月経痛です。その他の症状としては月経以外の出血、腰痛、頻尿(トイレが近い)等があります。症状は、できた場所によってまちまちですが、子宮の内側にできた筋腫は小さくても症状が強く、月経量が多くなります。逆に子宮の外側にできた筋腫は相当大きくなっても症状がでません。ですから、治療法もできた場所や症状によって異なってきます。妊娠しにくくなったり、流産しやすくなったりするのも大きな問題です。

診断

小さな筋腫は見つけにくいこともありますが、外来での一般的な診察と超音波を使って比較的簡便に診断できます。大きな筋腫や手術を考える場合にはMRI検査をすることもあります。大きな筋腫では約0.5%に悪性の子宮肉腫が含まれています。子宮肉腫と子宮筋腫を見分けることは難しく、画像や血液による検査や大きさや患者さんの年齢、大きくなるスピードで判断します。

治療法

前述の通り、場所とサイズにより、症状がまちまちなので、治療法の選択肢も様々です。
治療法には手術と薬があります。手術では子宮を取ってしまう(子宮全摘術)のと筋腫だけ取る手術(筋腫核出術)があります。
将来子供がほしい人では筋腫だけ取る手術を実施しますが、手術の際、出血が多くなるのが難点です。また、筋腫をとる手術をすると、出産の際に帝王切開が必要となる場合があります。子宮筋腫は複数個できることが多く、子宮の表層から見てもわからないような小さな筋腫は手術でも取り残すことになります。そのため数年後には取り残した筋腫がまた大きくなってくることもあります。当院では大部分の手術を腹腔鏡で行っており、お腹の傷は4カ所5-10mm程度のものです。大きさやできた場所によっては腹腔鏡手術が難しいこともあります。
粘膜下筋腫に対しては、子宮の出口から子宮の中にカメラを挿入して行う子宮鏡という手術方法が適している場合もあります。当院では、子宮鏡での手術も行っており、この手術ではお腹に傷がまったく入らないため、体への負担はさらに軽い手術となりますが、筋腫の大きさは位置により、適応とならない例もあります。
一方、子宮全摘は、子宮を筋腫ごとすべて摘出するため、子宮筋腫が再発することは通常ありません。毎月の出血や痛みがなくなり、さらに子宮がんの心配もなくなるためその後の長期的な通院治療は通常必要なくなります。卵巣を温存すれば女性ホルモンの分泌は術前と変わりありません。一方で妊娠はできなくなるため、妊娠を今後考えていない人が適応となります。この手術も当院では大部分を腹腔鏡で行っています。
薬の治療では閉経状態にしてしまう治療(偽閉経療法)が行われます。治療薬には飲み薬と4週間に1回の注射薬の2種類があります。しかし、この治療では女性ホルモンの分泌が少なくなるので更年期様の症状がでたり長期的には骨粗鬆症、心疾患のリスクを上げるため半年以内しか治療できません。また、治療初期には不規則な出血を認めることもあります。治療中は子宮筋腫が小さくなりますが、治療を中止するとまた大きくなってくることが多いです。ですから、筋腫を小さくするために、手術前に一時的に使用するか、閉経に至るまでの一時的治療として行われています。
その他の治療法として、また、栄養する血管をつめてしまう治療法(子宮動脈塞栓術)があり、子宮筋腫の縮小が期待できますが、正常子宮や卵巣を痛めてしまうことがあり、治療後の妊娠に対する悪影響がある可能性があるため、基本的に今後妊娠を考えてる方には勧められていません。カテーテル治療ですが、子宮が虚血におちいるため、術後の痛みはかなり強いこともあります。
また集束超音波装置による治療があり子宮筋腫の縮小が期待できますが、適応が限られるのとその後の妊娠に対する安全性が証明されていないため、やはり基本的に妊娠を今後考えられる方には推奨されないのと、保険適応外のため、費用が自己負担となります。子宮動脈塞栓術と集束超音波装置による治療は当院では行っていません。

メリット デメリット
子宮筋腫核出
(開腹、腹腔鏡)
月経痛改善や過多月経の改善の可能性
妊娠率上昇や周産期予後上昇の可能性
子宮筋腫の再発の可能性
半年間程度の避妊
妊娠時の分娩が帝王切開となる
症状が改善しないこともある
万が一子宮筋腫が悪性の場合、がんがお腹の中に広がる可能性
子宮粘膜下筋腫摘出
(子宮鏡)
同上
腹部に一切傷が入らない
適応が粘膜下筋腫のみに限られる
症状が改善しないこともある
子宮筋腫の再発の可能性
子宮全摘
(開腹、腹腔鏡)
月経痛がなくなる
出血もまったくなくなる
(卵巣を残せば女性ホルモンの分泌は変わらない)
筋腫の再発はない
子宮がんにならなくなる
妊娠ができなくなる
子宮動脈塞栓術 月経痛や過多月経の改善の可能性
腹腔鏡手術よりも傷は小さい
子宮筋腫の再発の可能性
症状が改善しないこともある
正常子宮や卵巣機能へ悪影響のでる可能性がある(妊娠は基本的におすすめできない)
術後の痛みがかなり強いことがある
GnRHアンタゴニスト
GnRHアゴニスト
一時的に子宮筋腫が縮小する 女性ホルモンの低下による更年期症状
(長期的な使用で骨粗鬆症や心血管病変のリスクが上昇するため、原則半年以内)
投与をやめると子宮筋腫はまたすぐに増大する

解説

産婦人科 科長 茂田 博行

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