卵巣は子宮の左右に一つずつあり、通常では2~3cmぐらいの大きさです。ここに発生した腫瘍が卵巣腫瘍であり、大きいものでは30cmを超えることもあります。卵巣腫瘍には様々な種類がありますが、その発生起源から表層上皮性・間質性腫瘍、性索間質性腫瘍、胚細胞腫瘍などに大別され、それぞれに、良性腫瘍、境界悪性腫瘍、悪性腫瘍があります。
(出典「公益社団法人 日本産科婦人科学会」
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卵巣腫瘍は、小さいときには無症状のことが多いです。腫瘍が大きくなると、腹部膨満感(お腹が張って苦しい)、下腹部痛、頻尿などの症状が出現することあります。腫瘍が破裂したり、茎捻転といって腫瘍がお腹の中でねじれてしまうと突然の強い下腹部痛が出現することもあります。
触診・内診や超音波検査で卵巣腫瘍の有無を診断します。CT検査などでたまたまみつかることもあります。
超音波検査にて腫瘍が嚢胞性(ふくろ状)の場合の多くは良性腫瘍ですが、充実性部分(かたまりの部分)が混在する場合や全体が充実性の場合などでは悪性腫瘍や境界悪性腫瘍も疑われます。詳しく調べる必要がある場合、MRI検査や採血による腫瘍マーカー測定を行います。これらの結果から総合的に良性腫瘍なのか悪性腫瘍や境界悪性腫瘍なのかを予想します。最終的には手術で摘出した腫瘍の病理組織検査によって診断が確定します。
治療は手術療法が原則です。付属器(卵巣と卵管)ごと摘出する方法(付属器摘出術)、腫瘍だけを摘出し卵巣実質を温存する方法(卵巣腫瘍摘出術)があります。卵巣腫瘍摘出術は、良性腫瘍と予想されており妊娠出産の希望がある場合や反対側の卵巣を既にとっている場合などに行います。
術式 | 腹腔鏡手術 | 開腹手術 | |
---|---|---|---|
良性腫瘍 | 付属器摘出または腫瘍摘出 | 保険適用 | 保険適用 |
境界悪性腫瘍 | 子宮、両側の付属器、大網切除 | 自費 | 保険適用 |
悪性腫瘍 | 子宮、両側の付属器、大網切除 +骨盤・傍大動脈リンパ節郭清 |
自費 | 保険適用 |
保険適応については2024年6月時点のものです。
良性が予想される場合は基本的に腹腔鏡下手術を行いますが、腫瘍の大きさや性状によっては開腹手術が適していることもあります。
付属器もしくは卵巣腫瘍を摘出し、病理学的に調べて、良性か、境界悪性腫瘍か、悪性腫瘍かを診断します。手術の後(およそ2週間後)に診断がつきますが、場合によっては手術中に簡易的に調べる(迅速診断)こともあります。ただし、迅速診断は簡易検査なので、手術後の正式な診断と異なる結果がでる場合があります。境界悪性腫瘍や悪性腫瘍と診断された場合は、あとから追加の手術が必要になります。手術中に迅速診断を行った場合はそのまま追加の手術を行います。
境界悪性腫瘍の場合、子宮、両側の付属器(卵巣と卵管)、大網(胃と大腸の間の膜)を切除することが基本となります。悪性腫瘍の場合、それに加えて骨盤・傍大動脈リンパ節(足の付け根から腎臓の下あたりまでのリンパ節)の摘出、腫瘍の拡がりによっては腸管や腹膜などの合併切除が必要となることがあります。
以後の妊娠・出産を希望している方は、その種類や拡がり(進行期)によっては健常側の卵巣・卵管や子宮を温存することが可能な場合がありますので担当医とよくご相談下さい。
また、開腹手術を行うか、腹腔鏡手術を行うかについても、その種類や拡がり(進行期)、大きさなどでそれぞれ異なりますので、担当医とよくご相談下さい。
解説
産婦人科 科長 倉澤 健太郎
休診日
土曜、
日曜、国民の祝日、
年末年始(12月29日〜
1月3日)
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