「医療機器の安全を担う専門家」として、医療の質や安全を守り続ける
相嶋 一登 臨床工学部技士長/医療安全・医療品質管理センター医療品質管理担当課長/臨床研究部担当課長/経営戦略課担当課長
市民病院で活躍するさまざまな職種のスタッフにフォーカスし、その人柄や医療にかける思いに迫る本企画。今回登場するのは、臨床工学部技士長の相嶋一登さんです。
「別の仕事を探そう」、その思いが変わった瞬間
高校生時代
自分ではあまり記憶にないのですが、私は0歳と2歳の時に入院したことがあって、 幼少期はよく病院のお世話になったそうです。その後は元気に成長し、大の勉強嫌いで、 アメフトに夢中な高校生に育ちました。スポーツ推薦での大学進学を希望していたのですが、 けがの影響で難しくなり、あらためて進路を検討することに。その時、自然と頭に浮かんだのが 医療系の仕事だったのです。
一口に医療と言ってもさまざまな領域がありますが、理科系の科目と機械いじりが好きだったこともあって、臨床工学に心惹かれました。昔からちょっとした家電製品、例えばビデオデッキなどが壊れたら、とりあえず自分でいじってみるタイプだったのです。「こういう構造になっているのか」「ここからあそこに電気が流れているんだな」などと考えて、正しい状態に戻せた時はとても気持ちよかったですね。
しかし、臨床工学が学べる学部に進学し、いざ勉強を初めてみると、正直なところつまらなくて……。4年生になるまで「別の仕事を探そう」と考えていたほどです。思いが変わったのは、血液浄化(透析)センターで2週間の実習に参加した際、一人の小学生の患児を受け持ったことがきっかけです。毎日のように顔を合わせるので仲良くなり、最終日にお別れを伝えると、その子が「いやだ!」と大泣きしてしまいました。なだめながら病室まで送っていき、いろいろ話しているうちに、初めて「自分も何かの役に立てているのかもしれない」と実感が沸いてきて、この道を進もうと心が決まったのです。

新卒でたった1人、現場に立った技士の運命は?
臨床工学技士と聞いても、何をしているかご存じない方も多いでしょう。私たちの仕事は、大きく分けると2つあります。1つ目が臨床業務で、生命維持管理装置(重要な臓器が働かなくなった時、その代わりをする機械)を操作し患者さんの状態を観察、評価する業務です。例えば、人工呼吸器や人工心肺装置などですね。手術室、集中治療室、血液浄化センターなどで、生命の危機に瀕している患者さんと多く接することが特徴です。
2つ目が、医療機器安全管理業務です。電気工学や材料工学などの知識を土台にして、さまざまな医療機器のメンテナンスやトラブル対応を担い、さらには運用管理や購入計画などにも関わります。また、医療機器の安全性や信頼性を維持するために、医師や看護師などに教育・研修をすることも大切な役割だと言えます。
実は、私が新卒で配属された病院は、新規開業に向けて建築中という段階で、同業の先輩は1人もいませんでした。私が最初の、そして唯一の臨床工学技士だったのです。この領域について知っている人は院内にほとんどおらず、事務職員である上司から「どんな仕事をするの?」と聞かれるほど。私の最初の仕事は、臨床工学技士が何をする職種なのかを、周囲に説明することだったのです。
もちろん、状況的には大変でしたが、臨床工学部そのものを立ち上げる過程には大きなやりがいがありました。皆と相談しながら業務の在り方を考えたり、必要な医療機器を検討・購入したり……。医局の勉強会にも必ず参加させてもらい、分厚い英語の文献を渡されて「これを翻訳してプレゼンしてほしい」と頼まれたことも。若手時代、医師に必死に食らいつきながら勉強したことが、医療職として大きな力になったと感じます。
技士の24時間配置で、もっと安心・安全な病院に
その後、市民病院に異動し、今では臨床工学技士長として21人のスタッフを束ねています。当院で力を入れてきたことの一つが、臨床工学技士の24時間配置ですね。本来であれば曜日や時間帯に関係なく、生命維持管理装置の安全性は均一に保たれていることが重要です。しかし、それを担保する臨床工学技士が、平日の日中しか配置されていないケースはまだまだ多いのです。

当院では、2008年頃に24時間配置の方針を固め、約10年間をかけて体制を構築しました。夜勤は交代制なので、集中治療室の患者さんの管理などに全員が対応できるようスキルを底上げしつつ、人員も増やしていったかたちです。技能だけでなく、「私たち臨床工学技士も患者さんに寄り添い続けるんだ」というメンタリティーが重要なので、それに共感してくれるメンバーを集め、育ててきました。夜中であっても多様な検査・治療が可能で、血液透析やECMO(エクモ)などにも即座に対応できることは病院として大きな強みであり、患者さんにとっても安心な環境ではないでしょうか。
こうした取り組みは医療の質や安全に直結すると思っていて、実際、2025年からは医療安全・医療品質管理センター医療品質管理担当の課長も務めています。医療にはどうしても不確実性が伴うからこそ、法令や社会規範に則っていることが大前提となります。社会全体の意識が大きく変わる中で、病院の業務を今の時代に合わせたルールに適合させていくことを意識しています。
いつどんな時も、たとえパンデミックや自然災害が起きたとしても、困っている人に手を差し伸べられる――。市民病院はそうした存在であるべきだと思うし、そのために、今自分ができることに心血を注いでいきたいです。
プロフィール
相嶋 一登(あいしま・かずと)臨床工学部技士長/医療安全・医療品質管理センター医療品質管理担当課長/臨床研究部担当課長/経営戦略課担当課長
横浜市出身。新卒で横浜市入庁、横浜市立脳血管医療センター(現・脳卒中・神経脊椎センター)に配属となり、臨床工学部の立ち上げに関わる。その後、2006年に市民病院に異動し、現在に至る。趣味は読書で、失敗の原因を分析するようなノンフィクションが好み。娘が看護、息子が獣医学を学んでおり、それぞれの領域の話を聞くことも楽しみの一つ。
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休診日
土曜、
日曜、国民の祝日、
年末年始(12月29日〜
1月3日)


