消化器外科の知見とやりがいを後進に伝え、より広く世に貢献したい
秋山 浩利 (副病院長/消化器外科長/消化器病センター長)
秋山 浩利(副病院長/消化器外科長/消化器病センター長)
市民病院で活躍するさまざまな職種のスタッフにフォーカスし、その人柄や医療にかける思いに迫る本企画。今回登場するのは、2026年4月に市民病院に入職し、副病院長、消化器外科長、消化器病センター長に就任した秋山浩利医師です。
ブラック・ジャックに憧れた少年が消化器外科医に
男兄弟3人で泥だらけになって遊び、しょっちゅう喧嘩もしながら育った、やんちゃな男の子でした。医師を目指すきっかけとなったのは、医療漫画の『ブラック・ジャック』です。メスを手に、たった1人で難しい治療に挑む姿に魅了され、連載されていた週刊少年漫画誌がボロボロになるまで読み続けていましたね。少年時代の憧れからそのまま、ほとんど迷いなく、医学部に進学することとなりました。

医学部で驚いたことの一つが、領域が細分化されていることです。ブラック・ジャックのように全部を一人の医師が担うのではなく、専門が細かく分かれていることを初めて知りました。実は、学生時代に勉強していて面白く感じたのは、脳外科や心臓外科です。それらの複雑さに比べると、消化器外科に関する学びは「病巣を切って管同士をつなぐ」といった非常にシンプルな内容が多く、正直なところ「簡単だなぁ」と思っていました。
しかし、実際に研修医として各診療科を回った時、心から興味を引かれたのは消化器外科だったのです。消化器外科では、栄養状態の悪い患者さん、術後肺炎などの合併症を起こす患者さん、他の持病がある患者さんなども多く、全身を診る力が求められます。大学で習ったこと以上に幅広い知識が必要で、「歯ごたえのある応用問題」という感覚でした。手術が上手で、なおかつ患者さんの全身を診られる医師が自分の理想だったので、この領域を極めたいと考えたのです。
東日本大震災で受けた衝撃が、新たな道へ誘ってくれた
大学卒業後は、関東労災病院など3つの病院を経験し、また所属医局の大学に戻ってきて、臨床と研究の両方に励みました。消化器系のがん患者さんは、手術によって患部を摘出され、摂れる食事の量が減ってしまうことが多いです。人間にとって「食」は非常に大切で、できるだけ消化機能が残せるよう尽力するわけですが、たとえ食べられる量が半減してしまっても、患者さんは「ありがとうございました」と本当にうれしそうに退院されるんですね。多くの方にとって、がんはそれだけ恐ろしい存在なのだと実感してきました。物理的に切除することでその恐怖から患者さんを解放できること、そして心からの笑顔を見られることが、この診療科の大きなやりがいです。
また、これまでのキャリアで最も印象に残っていることの一つが、東日本大震災です。宮城県からの要請で大学がDMAT(災害派遣医療チーム)を派遣する際、メンバーの一人として私も現地に赴きました。震災の翌週だったと思いますが、あの光景は忘れられません。例えば、私が週に2人のがん患者さんの手術をして、命を救えたとします。それを10年間続けたら、約1,000人を救ったと言えますね。ところが、東日本大震災では一瞬のうちに、2万人近い命が失われたのです。その重い事実を前に、自分がやってきたことは何だったのだろう――と思わざるを得ませんでした。
しかし、それと同時に頭に浮かんだのは、「どうしたらもっと効率よく人の命を救えるのだろう?」ということです。そうしてたどり着いた結論が、教育でした。自分が一人で手術の腕を磨くだけでなく、優れた医師をどんどん増やすことで、より広く世の中に貢献できるはずです。これが、後進の育成に重点を置くターニングポイントとなりました。

診療科同士の連携を強化し、どんな患者さんにも対応したい
私が考える「優れた医師」とは、患者さん一人ひとりの立場に立って「どういう治療をこの方は望んでいるだろう?」「自分だったらこの治療で満足できるだろうか?」と考え続けられる、理解しようと努められる医師です。そのためにも大切なのが、患者さんと対話すること。治療はガイドラインに沿って進めることが原則ですが、それだけがすべてではありません。医師としてよりよい選択肢を示すことはもちろん、本人の希望に耳を傾けることも忘れてはならないと思います。
私は2026年の4月に市民病院に入職しましたが、医師や看護師をはじめ、医療従事者の皆さんに大変優秀な方が多いことに驚きました。今後、当院の力を一層発揮していくために取り組みたいのが、診療科同士の連携強化です。例えば、消化器内科と消化器外科の垣根を取り払い、より柔軟にタッグを組むことができれば、迅速で質の高い治療が実現しやすくなります。当院は消化器系疾患の診療を効率的に行うため「消化器病センター」を設置していますが、今後もその機能を十分に発揮できるよう、しっかりと運用していきたいです。
とにかく、患者さんの満足度を高めることが最重要だと考えています。地域の皆さんにとって「ここで治療してよかった」と思えるような診療科であり、病院にしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
プロフィール
秋山 浩利(あきやま・ひろとし)副病院長/消化器外科長/消化器病センター長
札幌医科大学医学部卒業。横浜市立大学附属病院、関東労災病院などを経て、前職の横浜市立大学附属病院では2017年より診療教授を務める。2026年4月より現職。趣味はマラソンとランニングで、NPO法人日本医師ジョガーズ連盟という組織に所属し、マラソン大会時の医療支援にも関わった経験がある。

毎年続けていた富士登山。2010年、医局の後輩と山頂にて。
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休診日
土曜、
日曜、国民の祝日、
年末年始(12月29日〜
1月3日)


