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研修医日記

RESIDENT DIARY

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横浜マラソン4時間切りへの道

 研修医1年目のSです。

 研修医日記をご覧の皆さんは横浜市にゆかりのある方が多いと思います。さて突然ですが、横浜市最大のイベントは何でしょうか。そうです、横浜マラソンです。年によってバラツキありますが、40万から70万人の沿道応援人数を動員していると言われ、横浜市中心部の交通を規制して開催されていることからもこれは紛れもなく「最大」のイベントで間違いないでしょう。

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 今秋、横浜マラソンに参加してきたので、ランニングの魅力とともにその様子をお伝えできればと思います。

ランニングの魅力

 ランニングは一定の距離を走り抜くという、ただそれだけのシンプルなスポーツです。しかし、その「シンプルさ」の奥には、深い魅力が存在します。

 

 フルマラソン(42.195km)のような長距離でなくても、ほんの10分や15分の短い距離であっても、身体と心に与える効果は驚くほど大きいです。むしろ、日常生活に気軽に取り入れられる短時間のランニングこそ、多くの人にとって最も続けやすいと言えるでしょう。ランニングシューズさえあればどこでもでき、いつでも始められる手軽さも魅力です。

 

 軽いランニングであっても習慣化すれば、血圧や血糖値の改善、脂質代謝の向上など、生活習慣病の予防にも効果があることは皆さんのよく知るところでしょう。精神的な側面でもメリットは大きく、10分程度のランニングでも、気分の向上、ストレス軽減、認知機能の改善が報告されています。ほんの少し身体を動かすだけで頭がすっきりし、心が軽くなるのは、多くのランナーが実感するところです。初めは息苦しいかもしれませんが、走る中で疲労や痛みが軽減し、強い幸福感や高揚感を感じる「ランナーズハイ」という状態が起こります。快楽ホルモンであるセロトニンやエンドルフィンが脳内で分泌され、ストレス軽減や自己肯定感の向上を促すといわれています。なにか思い詰めていることがあれば、とりあえず走ってみましょう。きっといいことがあるはずです。

 

 いきなり10km単位の長距離を走り始めるのは難しいと思います。無理のない距離から始めれば身体への負担が少なく、日常生活のリズムにも組み込みやすいです。はじめは短い距離であっても、コツコツ続ければ長い距離を走れるようになります。過去の自分よりできることが増えていくのを実感するのって楽しくないですか? 昨日より長く走れた、いつもより速く走れた――そんな些細な成功が、きっと自信となるはずです。

横浜マラソンへ向けて

学生時代、 ランニングやマラソンが盛んな地域で生活していたこともあり、同級生や先輩・後輩とよく大会に参加していました。これまでにフルマラソンを7回、ウルトラマラソン(100km)を1回完走していますが、恥ずかしながらスピードはなくフルマラソンは毎回4時間2030分ほどのタイムです。

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 フルマラソンを4時間以内に完走することは「サブ4」と呼ばれ、全ランナーの上位20%が達成するといわれており、市民ランナーにとって大きな目標の一つです。マラソンを趣味として続けるうえで、どうしても到達したいラインでもあります。

 

 今回の横浜マラソンでも、目標はもちろんサブ4でした。

 

 マラソンの1か月前くらいから、仕事が終わった後に週23日ほど走るようにし、最初は3km程度から少しずつ距離を伸ばしていきました。外科ローテ中で忙しい時期ではありましたが、三ツ沢公園やみなとみらい、遠い日は鎌倉まで走り、体力を養いました。距離を延ばすときは、毎回のランニングで「今日はここまで走る」と目標地点を設定するとよいと思います。

 

 寮や病院から近い三ツ沢公園には1周3kmほどのランニングコースがあります。程よい高低差もあり、道も広めで走りやすいです。また、秋になると紅葉がきれいです。柴犬がよく散歩しているのですが、私は柴犬が好きなのでよく目で追ってしまいます。

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 走っている間は、計測アプリでペースが落ちていないか、前回のランニングと比べてどうかを確認しながら走っていました。できるだけ一定のペースを保つことを心がけ、体力温存のためにも序盤で飛ばしすぎないことを重視しています。自分の感覚では、1km 5分ペースは速め、6分ペースならより長い距離を走れる印象です。キロ6分であれば1時間で10km、フルマラソンは4時間ちょっとで走れる計算になります。

 

 横浜に住むのは研修医になってからがはじめてだったため、走りながら気になる飲食店を見つけることもありました。さまざまな場所を走ったおかげで、横浜近辺の地理にはかなり詳しくなったと思います。紹介元の施設や病院がどのあたりにあるかを知る手がかりにもなり、患者さんの転院先、紹介先を考えるうえで多少は役立つのではないでしょうか。

横浜マラソン当日(1025日)

 当日はあいにくの天気。杉田で折り返す42.195kmのレースが始まりました。

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 気温は肌寒く、レインコートを着て走るランナーも多く見られました。路面が濡れているため、転倒しないように注意して走り出します。

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 スタートから5km地点まではランナー同士の混雑が続き、自分のペースをつかむのが難しい状況でした。大きな水たまりも多く、靴が濡れないように気を遣いながら進みます。

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 雨でTシャツはすぐにびしょ濡れになってしまいましたが、気温が高くなかったこともあり、走るにはちょうどよい環境でした。10km地点の本牧付近を55分で通過。このあたりからは首都高の高架下に入るため雨をしのぐことができ、路面も乾いていて非常に走りやすかったです。ここからは1km 5分を切るペースに上げていきました。

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 23km付近で高架下区間が終わり、首都高杉田入口へ。ここが横浜マラソン最大の難所で、高低差15mの坂を上る必要があります(写真は当日撮り忘れたので後日のもの)。体力と脚をできるだけ消耗しないよう、ゆっくりと登っていきました。

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 ここまで2時間以内という快調なペース。ここまで速いペースで走ったことがなく自分でも不思議な感覚でした。

「このまま行けば4時間を切れるのでは?」

そんな期待が頭をよぎります。しかし首都高は横方向の傾斜が強く、路面の継ぎ目も濡れており、とても走りにくい状況でした。

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 横浜マラソンは2kmごとに補給所が設けられており、補給は十分に行えます。ありあけのハーバーや崎陽軒のシウマイなど、横浜ならではの食べ物も用意されていたようです。補給を楽しみに走るのも魅力の一つだと思いますが、今回はタイムに集中していたため見つけることができませんでした。

 

 首都高の区間は壁があり景色も変わらず単調でしたが、雨も上がって気温も快適になり、30km地点を2時間40分で通過します。

 

 ここまで1kmあたり520秒ほどの快調なペースでしたが、33kmを過ぎたあたりから脚が急に重くなり始めました。これがいわゆる「30kmの壁」なのだと感じつつ、1km 6分を超えないように必死で脚を前に運びます。

 

 40km地点の赤レンガ倉庫を過ぎ、いよいよゴールまであと少し。脚の筋肉はガチガチに固まりましたが、最後の力を振り絞ります。

 

 ハンマーヘッドを回り、インターコンチネンタルホテル前へ。

 脚はまるで棒のようになり、もうヘロヘロ。それでもゴールが見えた瞬間、「やっと終わる」という解放感に包まれました。そしてついにゴール。記録は3時間5456秒。なんとか4時間切り達成です。何度も完走していますが、フルマラソンを走り終えたあとの、あの何とも言えない達成感は格別です。

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 ゴール後に救護応援に来られていた救急科のN先生をたまたま見つけ、何度もハイタッチしました。横浜マラソンでは毎年ドクターランナーの募集もあるとのことで、来年はドクターランナーという救急の立場で走り、医療面でも貢献したいと思います。

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最後に

 「フルマラソン」と聞くと、多くの人が身構えてしまうでしょう。42.195kmという距離は、まるで別世界のように感じられるかもしれません。しかし、そんなふうに尻込みしているあなたにこそ挑戦する価値があるのです。

 

 できないと思っていたことを達成したときの達成感、そして自己効力感は、何にも代えがたいものです。初めてのことに挑戦するときは、最初の「一歩目」がなかなか踏み出せないものですが、どんなその道のプロにも初めてはあるはずです。何事もとりあえずトライしてみることの大切さを、ランニングは私に教えてくれたのでした。

 

 この研修医日記を読んでいるあなたも、新しい「一歩」を踏み出してみませんか? 継続していけばきっと「大きな道」になるはずです!

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