研修医日記
RESIDENT DIARY
この度、当院初期研修医であるY先生が書いた英語論文がなんとInternational Journal of Infectious Diseasesという海外医学英文誌に見事アクセプトされ念願のPubmedにその名が刻まれました。International Journal of Infectious DiseasesはImpact factor 8.4と極めて高く、驚くべき快挙です。
2024年3月に東京国際フォーラムで開催された日本造血免疫細胞療法学会にてY先生がポスター発表をした症例報告をY先生自らが英語論文化したものです。
当院感染症内科はHIV中核拠点病院であり、HIV診療に力を入れています。よってAIDS関連疾患であるHIV関連悪性リンパ腫の症例数も自ずと多くなります。再発難治性HIV関連悪性リンパ腫に対して造血幹細胞移植は治療選択肢となりますが、自家移植と比べて同種移植の報告は少なくその位置づけは明らかになっていません。また、HIV関連悪性リンパ腫に対する同種移植で大きな問題となるのは内服治療が困難となることです。全身放射線照射および大量化学療法という移植前処置により高度の粘膜障害が必発であり、数週間経口摂取や内服が困難となります。例え同種移植中であってもHIVに対するART(antiretroviral therapy)も継続しなければなりませんが、前述の高度粘膜障害によりART継続が困難となります。我々も非常に頭を悩ませていましたが、なんと日本初の持続性HIV感染症治療薬であるポカブリアとリカムビスがちょうど発売されたのです。しかも経口薬ではなく筋注薬なのです。これらの薬剤は月1回の投与で充分な効果を発揮します。本症例は臍帯血移植を施行しましたが、予想通り高度粘膜障害により抗HIV薬の内服が困難となりました。そこでポカブリアとリカムビス筋注に切り替えたところHIV-RNA量は検出感度以下を維持することができ臍帯血も無事生着しました。ポカブリアとリカムビス筋注併用下で同種移植を施行した世界初の症例です。Y先生は小児科志望でしたが是非学会発表と論文発表をしたいと強く希望され今回の快挙につながりました。日常臨床の忙しい中、試行錯誤をしながら慣れない英語論文作成に一生懸命取り組み、見事結果を出したことは本当に素晴らしいと思います。また、Y先生を熱心に指導して下さった血液内科の黒澤修兵先生、HIV治療に関して多大なるご助言を下さった感染症内科吉村幸浩先生に心から感謝申し上げます。
当院では、初期研修医の先生でもやる気と情熱があれば学会発表や論文発表、臨床研究など大学病院でもあまり経験できないようなことにも積極的に取り組んで頂いています。もちろん医師としての基本的技能を習得することも重要ですが、このようなアカデミックな事にも若いうちから触れておくと将来必ず役に立ちます。医学は劇的に進歩しており、患者さんのために診療の質を向上するには医師は新しい治療に関する知識を常にupdateする必要があります。大学病院の医師だけが研究者なのではなく、市中病院にいても、クリニックにいても、離島診療所にいても、どこにいても医師は生涯研究者なのだと思います。これからも大学病院に負けないよう研修医の皆さんとともに切磋琢磨していきたいと思います。
臨床研修委員長
仲里朝周
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