研修医日記
RESIDENT DIARY
皆さんこんにちは。臨床研修委員長のNです。今回はちょっと恥ずかしいお話なので今更なのですがイニシャルとさせて頂きます。私はどこをどう切ってもいわゆるおっさんなのですが、このおっさんという身分にもかかわらずなんと先日K-POPのコンサートに参戦してきました。私の娘がK-POPのある男性グループの大ファンで、ちょうどそのグループのコンサートが日本で開催されることになりました。娘は未成年なので自分でチケットを買うことができず、また人気が高いので一般の予約ではなかなかチケットをゲットすることができません。娘は韓国語を独学で学んで歌詞を日本語訳にできるほど熱心なんです。親馬鹿ですが娘は本当に勉強も部活も頑張っているので何とか役に立ちたいと思い、何を血迷ったのかこのおっさんである私めがファンクラブに入会しました。ファンクラブに入会すれば先行予約ができます。先行予約といっても抽選なのですがなんと見事当選しました。娘はとても喜んでくれましたがこんなおっさんと一緒に行くなんてちょっと不憫かなとも思いました。
コンサートの当日、私達親娘は満を持してコンサート会場に出陣しました。しかしそこにはなんとも恐ろしい光景が待ち受けていました。どこを見渡しても女子、女子、女子です。しかもかなり気合いの入った女子ばかりでそれぞれの推しメンうちわやクルクル回って光るペンライトを持っています。残念ながら私と同類のおっさんという種族は一人も見当たりません。とにかくアウェー感が半端ありません。肩身が狭いというのはまさにこの状態を指すのだと思いました。「存在を消したい」と念じながら娘とおとなしく会場に入りました。席に座ってほっと一息ついて周りを見渡したところ、なんと右斜め前に神々しいおっさんがいらっしゃるではないですか。「心の友よ」と私は脳内で叫びガッツポーズをしました。
さあいよいよコンサートの開幕です。電気が消えると会場中に女子の黄色い歓声が一斉に響き渡りました。歓声よりも驚いたのは皆さんが持っているペンライトが音楽と同期して一斉に光ったり消えたり、そして赤や青、黄色やピンクなどいろんな色にクルクル変わるんです。もっと驚いたことになんと右斜め前のおっさんもそのファン専用ペンライトを持ってるではありませんか。しかも2つも。私はそのおっさんにちょっと嫉妬しました。私だけペンライトを持っておらず寂しそうにしていると娘がそっと推しメンうちわを私に貸してくれました。娘の何気ない優しさに感激しました。私はひとまずその推しメンウチワを振って応援しました。
コンサートの詳しい内容は割愛させて頂きますが、とにかくクオリティの高さに衝撃を受けました。歌もダンスも完璧でおまけにみんなお美しくてこんなおっさんでも釘付けになってしまいました。初期研修医の先生達とまさに同世代の若者がこんなに努力と研鑽を重ねて一生懸命頑張っている姿に心から感銘を受けました。どんな職業でも老若男女問わず国籍を問わず努力を厭わない人達は本当にキラキラ輝いていて心から尊敬します。特に驚いたのは曲間のメンバー同士の会話を全て日本語で頑張っていたところです。しかも棒読みの日本語ではなく、それぞれご自身の言葉で一生懸命日本語でファンへの熱い想いを誠実に伝えようとしていて非常に好感がもてました。これは並々ならぬ努力だと思います。まさにグローバル化に対応しており、私達医療者も多国籍の人々にもっと丁寧に対応できるよう見習わなければと感じました。
コンサートは本当に夢のようなひとときだったのですが、私には想像を絶する悪夢が待ち受けていました。なんとコンサートの中盤から突然の尿意が私を襲ってきたのです。お昼にファミレスのドリンクバーで沢山飲んでしまったのが失敗でした。加齢による頻尿も影響したかもしれません。まさに膀胱破裂寸前の状態です。膀胱破裂で亡くなったとされている天才天文学者ティコ・ブラーエの事がふと頭によぎりました。トイレに行こうかと思いましたが、右も左も熱狂的にオールスタンディングで応援している女子達に完璧にディフェンスされておりとても通り抜けられる雰囲気ではありません。私は膀胱に振動を与えないよう生体反応を一時的に停止し微動だにしなくなりました。娘にはノリが悪いと思われていたかもしれませんが私にとっては死活問題でした。必死に尿道括約筋を持続収縮させて溢流を防いでいました。尿道括約筋が果たして随意筋なのか不随意筋なのかはもはやどうでもよく、とにかく交感神経を研ぎ澄まそうと膀胱に全集中しました。みなさん妖怪ウォッチのモレゾウをご存じでしょうか。モレゾウという妖怪にとりつかれると尿が漏れそうになるという世にも恐ろしい妖怪です。私も突然の尿意が襲ってきたのでこれはモレゾウにとりつかれたのだと確信しました。尿器がもし手元にあれば今すぐにでも使いたいと思いました。なんならおむつでもいいとさえ思うほどの極限状態でした。まさに失禁寸前の絶望的な時間が続きましたがなんとかアンコールまでたどり着きました。ラストの曲はユートピアというタイトルでしたが、これが終われば私には男子トイレというユートピアが待っている!という一心で耐え忍んでいました。ようやくコンサートが終演を迎え皆さん余韻に浸っていましたが、私には更なる試練が待ち受けていました。大きな会場だったので規制退場に従わなければならずしばらく席を立つことができなかったのです。私はいよいよ我慢できずに恥を忍んで隣の女子達にすみません、すみませんとあやまりながら何とか列を脱出することができました。そこからはもうトイレへ一目散です。私は男子トイレを血眼で探しました。しかしながら目の前に現れるのは何と女子、女子、女子、女子トイレばかりではありませんか。男子トイレが一つも見当たりません。どうやら男性グループを見に来るのはほぼ女性のため、男子トイレを臨時で女子トイレに切り替えるという世にも恐ろしい運用をしているようです。ここは男性にとってはユートピアでも何でもなく絶望の郷でした。まさかこんなところにジェンダー差別が存在するとは夢にも思いませんでした。本当にもう破裂寸前でしたので男性の係員に「だ、男子トイレはど、どこですか?」と尿道括約筋が緩まないよう小声で聞いたところ、「もう閉演なので外のトイレを探して下さい」と致命的な一言が発せられました。娘に事情を説明して私達は出口へ急ぎました。私は膀胱に振動を与えないよう骨盤の上下移動を最小限に抑えつつ小走りで出口までむかいました。出口の先には待望の男子トイレが凜然と輝いてみえます。そしてようやく私は絶望的な状態からやっと開放され、膀胱も全て開放され真のユートピアにたどり着くことができました。
娘には余計な心配をかけてしまい申し訳ない気持ちで一杯でしたが、親としての責任を何とか果たすことができてホッとしました。正直なところ、このおっさんという身分で若者のコンサートに行くことはちょっと恥ずかしくて不安でしたが、一生懸命全力で頑張っているメンバーの皆さんやファンの皆さんから大いなる勇気とパワーをもらうことができて本当に貴重な経験でした。ふだんは日常業務に忙殺され私も時々気分が落ち込んだりすることがありますが、明日からまた頑張ろうという元気を皆さんからもらうことができました。このような素敵な機会を与えてくれた娘にありがとうと感謝の気持ちをこの場を借りて伝えたいと思います。(娘がこの日記を読む確率は0.001%ぐらいだと思いますがいつの日か読んでくれることを願っています)
今回も臨床研修や医学とは全く関係のない日記となってしまい本当に申し訳ございません。医学生や研修医の皆さんも自分の知らない新しい世界から刺激を受けることはとてもとても大切な事ですので、勉強や仕事以外にも様々な素晴らしい経験を積んでこれからの医師人生に活かして頂ければと思います。
最後になりましたが、尿道括約筋には内尿道括約筋と外尿道括約筋があり、前者は不随意筋、後者は随意筋です。今回活躍したのは外尿道括約筋だった訳です。国試に出るかもしれないので要チェックです。
いや、やっぱり出ないかな。
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