研修医日記
RESIDENT DIARY
皆さん、「ホーミング」という医学用語をご存じでしょうか。「ホーミング」とはそのまま日本語に訳すと「故郷に帰る」ことです。医学の世界では、骨髄移植の際に使われる言葉です。骨髄移植はドナーから採取した骨髄液を患者(レシピエント)の骨髄に直接移植するのではなく、患者の末梢血管から骨髄液を点滴で投与をします。するとドナーの造血幹細胞がレシピエントの血液をめぐって最終的にはレシピエントの骨髄にたどり着き、そこで生着して造血を開始します。どうして造血幹細胞は骨髄に根付き、花を咲かせるのでしょうか。造血幹細胞は、骨髄のニッチと呼ばれる特殊な微小環境に存在します。骨髄ニッチにおいて、造血幹細胞の自己複製と各血液細胞への分化が厳密に調整され、一生にわたり造血が維持されます。骨髄移植で末梢から投与されたドナー造血幹細胞は最終的にはレシピエントの骨髄ニッチに到達します。これを「ホーミング」と呼びます。ニッチからサイトカインや接着因子などの誘導シグナルが供給されることと、幹細胞側で誘導シグナル感受機構が作動することの双方がホーミングには必要です。例えば骨髄では低酸素環境を造血幹細胞が感知することが重要なホーミング機構と考えられています。ホーミングが成立してはじめて造血幹細胞はニッチにおいて分化細胞産生が可能となります。
いきなり超真面目な話から入って申し訳ございません。この度、3月末に2年目研修医が当院を無事卒業されました。新型コロナウイルス感染症に振り回された2年間であり、一時は十分な研修ができない時期もあり皆さん本当にご苦労されたと思います。大変な2年間でしたがなかなか経験することができない貴重な財産だと思いますので、これからの医師人生にぜひ活かして頂ければと思います。
「造血幹細胞」とか「ニッチ」とか臨床研修と何の関係があるの?と思われる方もいらっしゃると思います。とうとうアンタの頭がおかしくなって研修医の皆さんが「造血幹細胞」に見えてきちゃったんじゃないの?と心配して下さっている方もいらっしゃるかと思います。実を申しますと、今年卒業した初期研修医19名のうち、なんと12名が専攻医として当院で引き続き働いてくれることになったんです。3名が当院の内科専門研修プログラム、3名が外科専門研修プログラム、2名が救急診療科専門研修プログラム、2名が小児科専門研修プログラムを選択してくれました。残りの2名は大学病院の基幹プログラム所属ですが当院へ連携施設として勤務する形となりました。約3分の2の研修医が故郷に残ってくれるなんて、これこそがまさに「ホーミング」ではないかと思います。これは指導医冥利に尽きるとっても嬉しい現象なんです。2年間もの間、当院の全職員が研修医の先生達へ魅力的なシグナルを発信し続けたこと、そしてそのシグナルが研修医の皆さんの琴線に触れて感受されたことの双方が成立して、この「ホーミング」を達成できたのだと思います。せっかく故郷に残ってくれたんですから、これからの3年間が皆さんにとって有意義で貴重な時間になるよう引き続き魅力的な誘導シグナルを発信し続けたいと思います。
皆さん、2年間本当にお疲れ様でした。また、横浜市立大学および慶應義塾大学からたすきがけで1年間当院で研修をされた皆さん、1年間本当にお疲れ様でした。そして、本当にありがとうございました。
皆さんの光輝く未来を心からお祈り申し上げます。
臨床研修委員長
仲里朝周
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