研修医日記
RESIDENT DIARY
当科は、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)を専門的に診療する、全国的にも非常に珍しい診療科です。このほか、腸管型ベーチェット病や家族性大腸腺腫症などの稀な腸疾患にも対応しています。
当科の診療の中心はIBDに対する外科治療ですが、IBD疑いの患者さんへの診断、内科的治療(薬物療法)、さらには内視鏡的拡張術などの内視鏡治療も積極的に行っています。診療領域が広いため、熱意ある看護師・薬剤師・医療ソーシャルワーカーなど、多職種と密に連携しながら、チーム医療を実践しています。
当院では、約30年前に潰瘍性大腸炎に対する回腸嚢肛門管吻合術を日本で初めて行った福島恒男先生の着任以降、全国からIBD手術を必要とする患者さんが多数紹介されるようになりました。現在では、年間200例以上のIBD関連手術を施行しており、東日本で最多の症例数を誇るハイボリュームセンターとなっています。
IBDに対する手術は、強い炎症による組織の脆弱化や、繰り返される炎症と手術により生じる高度の癒着などの影響で、非常に高い技術を要します。欧米のガイドラインでも、IBD手術は専門医による施行が望ましいとされています。
当科では、そうした高難度の手術を日常的に行っており、外科志望の研修医にとっては、非常に多くの学びが得られる環境です。
↑手術中の写真
現在、日本における炎症性腸疾患(IBD)の患者数は、潰瘍性大腸炎が約30万人、クローン病が約8万人と推定されており、もはや「まれな病気」ではなくなっています。
IBDと聞くと、「難病」「治らない病気」といった敷居の高さを感じるかもしれません。しかし、IBD診療の本質は、単なる患者さんの病気の治療にとどまらず、患者さんの学校生活や就労、結婚、出産といったライフイベントを見据えた、長期的かつ包括的な支援を行うことにあります。まさに、患者さんの人生に寄り添うやりがいのある仕事です。
近年、内科的治療は著しく進歩していますが、それでも外科治療が必要な患者さんは少なくなく、外科の関与なしにはIBD診療は成り立たないのが現状です。当科では、外科治療を中心に据えつつ、内科的治療も積極的に並行して行う体制をとっています。
内科的治療においては、進歩著しい生物学的製剤をはじめ、治験段階の新薬や、クローン病に合併する痔瘻に対する脂肪幹細胞注入療法など、最新の医療技術を積極的に導入しています。
当院は市中病院ではありますが、全国有数のIBD手術症例数を背景に、全国に向けて診療・研究の成果を発信する責務があると考え、学術活動にも力を入れています。
当科スタッフは、年間少なくとも5つの全国学会での発表を目標に活動しており、国際学会での発表も行っています。また、厚生労働省の研究班による多施設共同研究への参加や、臨床研究・論文執筆も積極的に行っています。さらに、各種研究会での講演や、学会セミナーでの講師も多数務めています。
初期研修医の先生には、まず地方会での学会発表にチャレンジしていただき、可能であれば論文執筆まで経験していただきます。後期研修医の先生には、地方会に加えて全国学会での発表、そして論文化までを目指して指導しています。
↑消化器病学会関東支部例会の研修医セッションで優秀賞受賞
当科は辰巳、黒木、後藤、中尾、小原の専任スタッフ5名に加え、後期研修医・初期研修医の先生方とともに、日々の診療を行っています。さらに、日本のIBD外科の第一人者である杉田昭先生、小金井先生にも、検査や外来診療を応援医師としてご支援いただいております。
少人数体制で外科・内科の両面から診療を行うのは決して容易ではありませんが、日本全国から集まる患者さんの生活の質や生命予後の向上を目指し、日々真摯に診療に取り組んでいます。
IBD患者さんの中には、術後を含めて食事が摂れない方や、脱水・電解質異常を来す方も多く、補液管理、栄養管理、電解質補正などの基本的な全身管理をしっかりと学ぶことができます。また、中心静脈カテーテルの挿入機会も豊富です。さらに、肺炎や感染性腸炎などの感染症や、IBDに伴う腸管外合併症など、多岐にわたる全身管理も経験できるため、外科志望でない先生にとっても有意義な研修になると思います。
診療科の雰囲気は非常にアットホームで、スタッフに気軽に質問したり、自分の意見や希望を伝えたりしやすい環境です。研修医の先生方の希望を最大限尊重し、できる限りご要望に沿った研修が提供できるよう配慮しております。
ぜひ当科での研修をご検討いただけますと幸いです。
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