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研修医日記

RESIDENT DIARY

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転機と地域研修

転機と地域研修

研修医2年目のSです。研修医生活も残りわずかとなりました。研修医2年間の中で思い出に残っている出来事について書きたいと思います。

 

まず私自身のことについてですが、私は学生時代、腎臓内科や呼吸器内科などの内科系を将来の進路として漠然と考えていました。そのため内科が揃っており、またこれまで私の部活の先輩も数多く研修していた当院を研修先の候補として考えました。実際に働き始めてみると、病院見学時の印象通り、優しく接して下さるスタッフの方々、困ったときに何でも相談できる同期のいる環境の下で研修生活を送ることができました。

 

そんな私に転機が訪れたのは、研修医1年目の終わりの外科ローテでした。学生の頃は、手術に入ることも手術室にいること自体にも苦手意識が強くあり、自分には到底できないようなことにも感じられ、外科を進路として考えたことはありませんでした。しかし、研修医になってから手術に入ってみると、不思議と面白いと感じるようになりました。

 

特に1年目の終わりの呼吸器外科、消化器外科ローテは印象的でした。呼吸器外科ローテでは上級医の先生方が、当時何も知らなかった私に本当に丁寧にご指導くださり、手術中にも多くの手技に挑戦する機会を下さいました。手術に入る前にはその手術や患者さんについての予習も一緒に詳しくして下さり、予習をしっかりと行った上で手術に臨むとより一層興味が湧きました。手術も病棟管理も面白く、毎日が楽しかったのですが、外科という道に進むことについては不安な気持ちが強くありました。体力的にも精神的にも大丈夫なのだろうか、本当に私にできるのか、そもそも元々は内科を考えていたのに。そんな気持ちを抱えながら消化器外科のローテートに突入しました。

 

消化器外科ローテの1週目、新しい科になりまだまだ緊張している最中、ある専攻医の先生が「外科興味あるの?」と声をかけてくれました。興味はありますが、向いているのかどうかも分からないし、やっていけるのか自信がなくて、、、と話す私に、「向いているかどうかは実際にやってみないと分からないよ」と言って下さり、上の先生に掛け合って下さり、術者としての経験を含め、様々なチャンスを与えて下さいました。周りの先生方のサポートの下、自分の手で患者さんを治す外科の魅力を知り、外科に進みたい気持ちがさらに強まっていきました。その後も何度も自問自答は繰り返しましたが、気持ちは変わることなく、研修医2年目の5月頃に外科の道に進むことを決意しました。

 

このような温かく熱心な先生方との出会いがあったからこそ、予想もしていなかった自身の可能性も引き出されたとも感じており、運も良かったと思っています。

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              (研修医1年目の初めに糸結び練習中、偶然写真に収めていました)

 

そんな転機もあった研修医生活の中でも、特に印象深かったのは地域医療研修でした。私は10月に八重山病院附属大原診療所という、西表島東部地区にある診療所にて2週間地域研修を行いました。スタッフは医師1名、看護師1名、事務2名という小規模な診療所で、まさにドクターコトーの世界でした。医師は24時間オンコールで、東部地区の医療を担います。(西表島は西部地区にはもう一つ診療所があり、計2名の医師で人口2500人の島を支えています。)普段は外来がメインですが、地区には高齢の方も多く住んでおり、訪問診療も行っていました。

 

印象深かったのは、島の住民との距離の近さです。診療所のスタッフは患者一人一人の家族や住居などの社会的背景も把握していました。また、その地区の医師が一人というのは責任が重大である一方、裏を返せば住民に何かあった際には必ず最初に声がかかり、まさにかかりつけ医としてその患者さんの急性期から慢性期、終末期までの診療にあたっていました。離島という特別な環境下であるからこそ実現している面はあり、離島診療の魅力の一つだと感じました。診療所の医師は若い女性医師であり、年齢が近いこともあり公私ともに大変お世話になりました。

 

2週間の滞在では、たくさんの島の方々との出会うことができました。若くして西表島に移住し現在はさとうきび農家をされている方には島にいる珍獣の見つけ方や自然の面白さを熱く教えていただき、お陰で絶滅危惧種の動物にも多く出会えました。近所のおばあちゃんには島の植物を教わり庭で採れた食材をいただき、地元の居酒屋の店主の方に泡盛の美味しさを教えてもらい、また丸一日かけていく滝のツアーに連れて行って下さる方もいて、島の人しか知らないような西表島の魅力も数多く知りました。

最終日には地元の小学校の運動会にも顔を出させていただき、お世話になった住民の方とお話ししお別れの挨拶をすることができました。

 

西表島での思い出は書ききれませんが、離島医療の経験のみならず、診療所のスタッフの方々、住民の皆様との出会いが貴重な経験で、島の方々の温かさに触れる中で医療者としての意識も高まっていった2週間でした。お世話になりました。

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                                         (西表島 星立海岸の海)

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