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研修医日記

RESIDENT DIARY

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のろまなカメ

のろまなカメ

皆さんこんにちは。臨床研修委員長の仲里朝周と申します。この研修医日記を始めてから早2年となりますが、開始当初は初期研修医の先生が忙しそうで日記執筆のお願いがしづらく、私自身が研修医でもないのに指導医日記と称して執筆をしておりました。最近は研修医日記も浸透してきて、研修医の皆さんに定期的に書いてもらえるようになりました。しかしながらたまには私も日記を書いてみたいと突然思い立って執筆することとしました。とはいうものの医学的で高尚な内容はあまり思い浮かばず、平凡で日常的なお話をしたいと思います。
 皆さん、カメはお好きですか。カメと聞いて思い浮かぶのは「こち亀」「亀仙人」「亀梨くん」ぐらいでしょうか。唐突で申し訳ございませんが私の小学生の愚息が誕生日プレゼントにカメが欲しいと突然言い出したので、なぜかカメを飼う羽目になりました。つい2年ほど前には、「昆虫博士になる」と豪語していたわが息子ですが(過去の研修医日記「パプキン」をご参照下さい)、いつの間にか昆虫への興味が薄れてしまい最近ではほぼネグレクト状態となり、私だけが高齢化したクワガタ達の生命の灯が消えないよう日々懸命に介護を担当しています。父親というものは、毎年変わる子供の趣味に適宜アジャストしなければならず結構大変ですね。上の娘2人はすでに大きくなり私なぞには見向きもしないので、小学生の息子は私の心の友であります。息子はどうやらクラスの飼育係になったらしく、学校でカメのお世話をしているうちに愛着がわいてしまいどうしてもカメが欲しくなってしまったようです。執事の私めが昆虫の時と同じく100%maxでお世話することになるであろうことは容易に想像できましたが、ゲームやスマホを買ってくれといわれるよりもよっぽど子供らしいお願いだったのでペットショップにカメを買いに行くこととしました。
 横浜の某ペットショップには爬虫類・両生類専門のコーナーがあり、トカゲやイグアナ、カメレオン、ヘビ、カメ、イモリ、カエルなど様々な種類の生き物が揃っていました。苦手な人は名前を聞くだけでゾッとすると思います。わが息子はカメレオンやイグアナといった私のお小遣いを大幅に逸脱するような生物には目もくれず可愛らしいカメ達に夢中で内心ホッとしました。親の本能でしょうか、まず最初に確認するのはかわいいかどうかではなく値札です。中には20万円とか30万円と書かれている恐ろしい値段のオオトカゲやヘビもいました。一体誰が買えるんでしょうね。値札を横目でチラッと瞬時にチェックし適格基準を満たすようであれば息子に「これいいんじゃない?」と猛烈にプッシュします。結局息子は私の洗脳の甲斐あって「リバークーター」という小さくて可愛くておまけに値段が安いカメを気に入ったようで2匹買いました。2匹とも体長5~6cmの子ガメです。「リバークーター」は北米に生息するカメで大きくなると体長30~40cmにもなるようです。寿命はなんと30年ぐらいだそうで私の平均余命と同じぐらいです。まさに一生のお付き合いになりそうで感慨深いものがあります。念願のカメを買ってホッとしましたが、カメの飼育には様々なアイテムが必要なんです。カメは日光浴が好きなので照明ライトが必要なのと、くる病予防のために紫外線ライトも必要になります。紫外線にあたらないと一丁前にくる病になるらしいです。興味深いですね。結局いろんなアイテムを買って帰りました。
 「カメなんて臨床研修と全く関係がないじゃないか!」とお怒りになっている方がいらっしゃるかと思います。また、「カメって爬虫類?両生類?どっちにしても気持ち悪いから今すぐ捨ててきなさい!」と昔母親からよく言われたのと同じように思っている方も多いのではと思います。因みにカメは爬虫類です。カメの話をしてしまった以上、カメと医療との関連について蘊蓄を垂れようと思いましたが残念ながら私の凡庸な頭では「亀田総合病院」しか思い浮かびません。亀田総合病院といえば臨床研修病院として人気の高い有名な病院ですので、若干カメと臨床研修との関連をわずかに見出しました。しかしこれでは許されません。
そういえばふと思い出したのですが、私が研修医1年目になりたての頃、上級医から「お前はのろまなカメみたいだな」と言われたことがあります。一緒にローテートしていた2人がその科の優秀な大学院生で仕事がウサギのように早かったため、仕事がカメのように遅い私は常に比較されて怒られていました。「お前医者に向いてないよ」「医者やめた方がいい」といわれたこともあります。今考えてみるとかなりヒドイことを言われていたと思いますが、私は頭の回転もカメのようにのろかったため鈍感すぎてあまり気にしなかったのかもしれません。そんなカメのようにのろまな私でも一応一人前の内科医になれました。個人的には初期研修医はウサギでもカメでもどっちでもいいと思います。人のペースに合わせることは全くありません。研修医だって一人一人個性が違うのだから十人十色です。もちろん緊急時にはウサギのようなスピードで働くことが必要ですが、時にはカメのようにゆっくり考えてから行動することも必要です。よく「○○病院の研修医は1年目でCVを沢山入れているらしいよ」みたいなことを耳にしますが、「俺はCVを何本も入れている」といった武勇伝的な話はあまり参考にしない方がよいと思います。早く経験できたからといって必ずしも自分の身になるとは限りません。むしろ「正しい指導の下、正しい方法で手技を習得する」ことが研修医にはより重要で価値のある事だと思います。件数が少なくても「正しく教わる」ことが大切です。また研修医の皆さんは自分の仕事の遅さに頭を抱えてしまうこともあるかと思いますが、目標さえしっかり持っていれば全く心配はありません。人は人、自分は自分なのです。あいつはウサギ、僕はカメ、でもいつの日か追いつき追い越してやるぞ!と思っていればよいのです。大切なのは今目の前にある課題をしっかりと認識して焦らず根気よく一つ一つ克服していくことです。日々の積み重ねは必ず大きな成果を生みます。
 あれ、いつのまにか「ウサギとカメ」の話になってしまいましたね。私は研修医時代に「のろまなカメ」と呼ばれましたが、実のところカメは全然のろまではありません。エサを血眼になって追いかける時なんてとても俊敏に動きます。普段のろまに見えても彼らはやる時はやるんです。「のろまなカメ」も言い換えると「思慮深いカメ」「丁寧なカメ」のようにポジティブにとらえることもできます。「思慮深い研修医」「丁寧な研修医」なんてステキですよね。世界最高齢のセイシェルゾウガメのジョナサンはなんと現在189歳だそうです。カメが長寿である秘訣はテロメアが長いことにあります。テロメアは活性酸素(ROS)により短くなりますがカメはこのROSを消去する抗酸化能が高いそうです。私なんぞは日々活性酸素の攻撃を受けテロメアがどんどん短くなり細胞老化を食いとどめることはもはや不可能な状態に陥っていますが、皆さんはカメのように根気強く一歩ずつ前へ進み、最終的には酸化ストレスに打ち勝ち、テロメアをぐんぐん伸ばして「丁寧で思慮深い医師」になれるよう日々頑張って下さい。以上、我が家のカメ自慢でした。

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