研修医日記
RESIDENT DIARY
整形外科長の藤巻です。
整形外科は骨・関節・筋肉・神経など「運動器」を扱う診療科で、主に首から下の全身におよぶ四肢関節や脊椎に関する外傷・疾患を対象に治療を行っています。直接患者さんの生死にかかわるケースは多くはありませんが、重度の多発外傷を扱うこともありますし、高齢者などでは運動機能の低下が生命予後に大きく影響を与えることも少なくありません。何よりも外傷などにより著しく障害を被った患者さんが治療によって回復する経過を実感したり、慢性疾患の治療によりQOLが向上し患者さんが喜んでいらっしゃるのを見たりすることは整形外科冥利に尽きると日々感じています。
皆さんは「健康寿命」という言葉を知っているでしょうか?健康上の問題によって日常生活が制限されない状態の期間のことです。現在の日本は世界最高の長寿国でありますが、平均寿命と健康寿命のあいだに10年程度の乖離があることが問題視されています。このため、政策としても「健康寿命の延伸」が明記されるようになってきています。健康寿命を考えるときに2022年の国の公表データを見ると、要支援・要介護になった原因として第1位認知症、第2位脳血管疾患の引き続き、第3位に骨折・転倒(14%)/第5位に関節疾患(10%)が挙がっています。この2つを合計すると全体の約1/4は整形外科関連なのです。
厚生労働省資料から今後の医療需要予測を見ると、2040年頃に全国での入院医療需要はピークを迎えると推計されており、この時65歳以上の高齢者が占める割合は約8割になると見込まれています。日本はすでに人口減少社会になってきています。これから医師として研鑽を積んでいく皆さんがご自身のキャリアを考える際に、自分が選ぶ分野に長期的な需要があり続けるだろうか?という視点は非常に重要になります。人口減少の中でも高齢化の進行、長命よりも健康寿命延伸を目指す国の政策などを見ると、整形外科関連疾患の需要は今後も増加すると見込まれます。これから医師としての長いキャリアをスタートする皆さんは需要が高まると見込まれる整形外科をご自身の専門としますか?それとも超高齢社会で必要とされる整形外科分野の知識を十分に持った医師になりますか?これからの医療需要に応えられる医師になるために、いずれかを選ぶ必要があるのではないでしょうか。
当院は夜間休日も含めて24時間必ず整形外科医が院内待機している体制となっていますが、これは救急センターなどではない一般病院としてはかなり珍しいケースです。救急診療科の先生方とも連携しながら、横浜市の救急医療の一翼を担っております。
整形外科で扱う疾患も多岐にわたり、様々な外傷をはじめ人工関節・脊椎・スポーツ整形など、整形外科の中でも主要な専門分野での手術症例も多く、加えて救急救命(脊椎や骨盤などの重度外傷や頸髄損傷など)や関節リウマチ、小児整形外科、骨軟部腫瘍などの豊富な臨床経験を有する医師も当科に在籍しているため整形外科のほぼ全ての分野を経験する事ができます。人工関節ではナビゲーションシステムなどコンピュータ支援技術を駆使した精緻な手術を行う一方で、患者さん固有のアライメント(骨や関節の位置関係のこと)を尊重する個別的な手術にも取り組んでいます。近隣では専門医の少ない肩関節手術にも力を入れていて様々な関節鏡手術や、やや特殊な人工関節(リバース型人工肩関節)にも対応しています。スポーツ分野では近隣の横浜国立大学アメリカンフットボールチームのチームドクターでもあり、現役のスポーツ選手の診療も実際に見ることもできます。TOKYO2020(夏季オリンピック)では横浜スタジアムをメイン会場とした野球競技でのメディカルスタッフも務めました。
当院の整形外科は11名のスタッフで診療にあたっていて全員が横浜市立大学整形外科医局からの派遣ですので、一丸となって意志共有しながら診療に取り組んでいます。昨今の働き方改革にも対応し、若手でも夜勤明けには帰宅できるよう、週末勤務した際には代休が取れるよう、チーム医療(複数担当医制)を導入推進している一方で、診療科長としては研修医や専攻医の先生方には限られた勤務時間内でも大きく成長できる環境を提供すべく目指しています。ありがたいことに、医局員が200名を超える横浜市立大学整形外科医局の中でも専攻医の先生方からは上位の評価をいただくことができています。①各医師が不安を感じることなく自分の意見を出したり質問したりできる風土、若手も含めて各自が気兼ねなく発言できる雰囲気の整形外科をつくること。②整形外科スタッフが横浜市立市民病院での仕事に誇りを持って生き生きと仕事自体を楽しみながら、仕事に夢中になれる職場環境をつくること、その上で成果を上げられる組織を構築すること。③整形外科スタッフがしっかりと学べる環境、特に若手にとって自分自身が学んで成長していると実感できる環境を作ること。この3つを診療科の目標に掲げています。
整形外科になりたいわけではなくても、興味を持っていただいた方にはぜひ当院での初期研修をお勧めします。たとえ1-2カ月と短い期間であったとしても、当院の整形外科で研修していただくと今後の医師としての人生の糧になる経験を得られると思います。今後整形外科医を目指したいという先生方も大歓迎です。一緒に横浜の整形外科医療を盛り上げていってくれる先生方からのお声掛けもお待ちしています。
↑2025年度整形外科スタッフ
↑東京オリンピックでの様子(横浜スタジアム)
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バス停「市民病院」下車 ※令和2年5月2日に新設
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・横浜駅西口から三ツ沢総合グランド経由のバスに乗車
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