研修医日記
RESIDENT DIARY
皆さんこんにちは。臨床研修委員長の仲里朝周です。今日は国際化についてお話をしたいと思います。当院では国際化を推進するために国際医療支援室を昨年立ち上げました。また、この1年間、ウクライナ避難民の方々の診療も積極的に取り組んでいます。職員を対象とした英会話教室も院内で開催されています。このように少しずつですが国際化を推進しています。さらに外国人患者受け入れ医療機関認証制度(JMIP)の認証機関として承認されました。「おっ、横浜市の市民病院なだけに国際化も順調に進んでいるな。よしよし。」なんていい気になって思っていたのですが、国際化を語るにはまだまだ力不足だな、と痛感する出来事がつい最近ありましたのでご紹介させて頂きます。
突然ですが、シンガポールから当院へ視察の打診が来ました。シンガポールに大規模な新病院を建設する予定とのことで、それに備えて世界の様々な病院の視察をしているのだそうです。シンガポールから大臣や世界的に有名な教授などが30名程当院へ視察に来ることになりました。どうして当院が選ばれたのか詳細は不明ですが、2年前に新病院に移転したこと、感染症指定医療機関としてCOVID-19診療に全力を注いていること、そしてアメリカのNewsweek誌が選んだ「The World Best Hospitals Top 250」に見事当院が選ばれたことなどが認められたのでは、と少し得意げに、ポジティブに考えておりました。しかし、相手方の所属病院を調べてみるとThe World Best Hospitals Top 250のなんと世界12位!という恐ろしくハイクオリティな病院であることが判明し、一同全身が硬直してしまいました。突然の黒船襲来!みたいな雰囲気となり我々も緊張を隠せませんでした。小松病院長をはじめ病院幹部、事務の皆さんもかなり気合を入れて準備に取り掛かりました。
私、お恥ずかしながら海外留学の経験がございません。若い頃は留学も考えましたが、子供が小さかったこともあり将来の事を考えると、海外留学という冒険に出る勇気がなく、現在に至っております。ただ英語がうまく話せなくても日本での診療では大きな問題はなく、時々参加する海外学会においても、ポスター発表であれば1時間ほどポスターの前で耐え忍ぶだけなのであまり支障はありませんでした。特に海外の学会ではポスター会場でお酒が飲めたりするので先にワインで酔っぱらってしまえばお酒に勇気をもらって何とかなってしまうものです。また、時に外国の方が入院することもありますが、あらかじめ英語の文章を作っておけば病状説明も何とかなっていました。最近ではポケトークやVoiceTraという高性能な翻訳アプリもあり多言語にも対応できるようになっています。
しかしながら、さすがに翻訳アプリを使う訳にはいきません。短時間で準備しなければなりませんが、どうしたら英会話を短期間で上達させることができるでしょうか。私はもうやけになって1週間前から「オンライン英会話」を急遽始めました。ちょうど当科に実習にきて下さった学生さんが、「オンライン英会話」をすすめてくれました。こうなれば、上達するというより「習うより慣れろ」ということで1週間できる限り英語に接しようと思いました。結局、何も考えず1週間で20レッスン受けました。自宅では犬のラーちゃんや愚息がワンワンキャーキャーうるさいので駅に設置されているstation boothという個室ワークスペースをオンライン予約してそこでオンライン英会話の授業を受けました。お世辞にも英会話が上達したとは感じませんでしたが、とにかく外国の方と話す上で緊張することはなくなり何か英語を発することはできるようになりました。
さていよいよシンガポール御一行様が来院されました。本当に30名の皆さんがいらっしゃいました。肩書きをみると大臣や教授など立派な方々ばかりです。まず始めに、横浜市の医療体制と当院の紹介を小松病院長自らがスライドを用いて英語で30分程プレゼンテーションをされました。小松病院長は部下に任せるのではなく自らが率先してこの難しいミッションに挑まれました。こういった強力なリーダーシップと責任感を持って行動に移すことができる小松病院長を私は心から尊敬しています。私だけでなく皆そう感じていると思います。その後質疑応答の時間がありましたが、シンガポールの皆様から非常に多くの質問があり驚きました。小松病院長が一つ一つの質問に英語で頑張って答えていらっしゃり、いや本当に頭が下がる思いでした。
次に2グループに分かれて院内の視察に向かいました。私は患者総合サポートセンター長として患者総合サポートセンター(Patient Support Center: PSC)を英語で紹介しなければならず、恥ずかしながら超緊張していました。緊張のあまりβブロッカーを内服して臨んだほどです。完全なヘタレですね。余談ですが、私は1年のうち3回だけβブロッカーを飲む日があります。それは夏に3回に分けて行われる初期研修医採用試験の日です。受験される医学生の皆さんが緊張するのは分かると思いますが、なぜか試験監督である私も異常に緊張してしまうんです。医学生の皆さんの人生を左右する一大イベントだと思うと毎回緊張してしまいます。これは何年繰り返しても変わりません。話がそれてすみません。前日に英語の読み原稿を作り何十回も練習して臨みましたが、やはりそううまくは行きませんでした。シンガポールの皆様はなぜかPSCの業務(地域連携や入院前面談、病床コントロール、ICTなど)に異常に興味津々で話の途中途中でどんどん質問を投げかけてきました。予想外の質問の多さに私の緊張は更に高まり、頭が真っ白になりました。しかし私もこのような緊急事態を予測してカンペを準備していました。またまた余談ですがカンニングペーパーは英語でcheat sheetと言うそうです。私は”cheat sheet!”と叫んで皆さんにお断りしてcheat sheetを堂々と見ながら説明を続けました。その後も英語の質問が四方八方からあり完全にサンドバッグ状態となりました。端から見ると周りを囲まれて英語でボコボコにされているような感じだったと思います。私はカタコトの英語で頑張って答える努力をしましたが、正直半分ぐらいしか詳しい内容を聞き取ることができませんでした。まさに四面楚歌、因みに英語で言うと”No-win situation”に陥りましたが、ここで満を持して我らが救世主の登場です。英語が堪能な呼吸器内科の谷口先生、小児科の木下先生、そして国際医療支援室のヨンさんが私達の通訳として全面的にサポートして下さりました。私が困り果てているところに流暢な英語で丁寧にご回答下さりました。3人とも神々しく後光が差して見えました。本当に流れるような美しい英語で同じ人間界の方々とは到底思えずまさに女神様でした。英語がしゃべれるとこんなにもカッコイイものかと改めて感心しました。途中からは通訳の先生方に任せきりになってしまい、私も心の余裕ができたせいかサッカーの三苫選手や富安選手がインタビューを英語で答えているのは本当にスゴイことなんだな、などと余計なことまで考えてしまいました。
結局、午前8時30分から4時間近くシンガポールの皆様と過ごしました。こんなにも異常に長く感じられた4時間はこれまでありませんでした。その日の夜、私はちょうど当直でしたが、英語の質問攻めに比べたら当直なんて全然苦にもならないと初めて感じられました。シンガポール御一行様は皆さんとても満足をされてお帰りになられたようですので何とか各自使命は果たせたようです。
長々と書いてしまい申し訳ございません。結局何が言いたいかというと、
「英会話は若いうちから頑張った方が良いですよ!」
ということです。今回のように、思いがけないところで英語が必要になるかもしれません。私のように年をとってからあわてて勉強しても付け焼き刃にしかなりません。チャンスがあったら海外留学や英会話の勉強を是非トライしてみて下さい。
なんて言ってはみたものの、よく考えたら医学生の皆さんは言われるまでもなく英会話を熱心に取り組んでいる方が多いですよね。毎年研修医採用試験の面接カードを拝見すると、特技・資格として「TOEIC 950点」、「TOEFL iBT 110点」、「英検1級」など錚々たる業績が記載されている方も少なくなく、余計な心配かもしれません。皆さんすごいなあといつも感心しています。私もこれにめげずにせっかく始めたオンライン英会話を細々とでも継続していきたいと思います。
次はどこの国の方々が視察にいらっしゃるのでしょうか。あんなに黒船を恐れていたのに興奮冷めやらず、今や「バッチこいや!」状態です。Bring it on!
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