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研修医日記

RESIDENT DIARY

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突然ですが、犬飼い始めました

突然ですが、犬飼い始めました

 皆さんこんにちは。臨床研修委員長の仲里朝周です。この研修医日記を始めてから3年が経ちますが、頼まれてもいないのに私も時々日記を書きたくなってしまいます。しかしながらあまり堅苦しいことを書くのは苦手なので、いつも通り臨床研修とは全く関係のない平凡な日常を紹介したいと思います。

 突然ですが私、犬を飼い始めました。私の妹がボーダーコリーという犬を飼っていて子供が7匹生まれたので1匹引き取ってくれないかと突然連絡がきました。これまで私は小学生の愚息の忠実な執事として仰せの通りにクワガタ、カメなどを飼ってきたのですが(過去の研修医日記「パプキン」「のろまなカメ」をご参照下さい)、さすがに犬を飼うのはハードルが高いのでとても悩みました。以前から我が愚息は「わんちゃんを飼いたい!」と熱望していたのですが、「死んじゃった時がかわいそうでしょ」とか「お姉ちゃんが犬アレルギーだからねえ」などと謎の言い訳をして逃れてきました。本音を言うと犬は数十万円と非常に高価なのでとても買う気にはなれませんでした。犬の生涯費用は400万円もかかるとのことです。しかしながら我が愚息が「わんちゃんを飼うのが僕の一生の夢」と常日頃言っていたので、ささやかな夢を叶えてあげたいと思い子犬を引き取ることにしました。小学生の愚息は私の心の友ですが、もう5年生となり中学生になったら父親とは口も聞いてくれなくなるかもしれません。以前にある患者さんが「犬を飼っていると父と息子の親子関係がうまくいくんですよ。犬の散歩を一緒にしていると息子と日々会話をするので反抗期は一度もありませんでした。」とおっしゃっていたのをふと思い出しました。「これはチャンスだぞ」と思い子犬を引き取る決心をしました。愚息は喜びのあまり狂喜乱舞しておりました。とはいうものの犬なんて飼ったことがなく、まったくの初心者なので日々悪戦苦闘をしております。生後2ヶ月の子犬と聞いていたのですが実際にはすでに体が大きく、用意したケージを破壊してしまいました。そこで頑丈で大きめのケージを2つつなげて少々跳ねても大丈夫なように工夫をしました。一番の問題はウ○チ問題です。まだ不慣れなのかおトイレがうまくいかず、ウ○チをトイレ以外の場所に頻回にしてしまいます。今朝も朝430分からウ○チとの戦いが始まりました。最近は勤務中もウ○チ、レジナビ参加中もウ○チ、オンライン説明会中もウ○チのことを考えてしまうほど悩みの種です。(お食事中の方、大変申し訳ございません)ちなみに犬の名前は「ラーちゃん」と名付けました。女の子です。家族全員がラーメン好きというただそれだけの理由で名付けられました。ちょっと可哀想です。ボーダーコリーは黒と白色が一般的ですが、うちのラーちゃんは珍しく薄茶色と白色でとてもかわいいです。

 「犬なんて臨床研修と全く関係がないじゃないか!」とお怒りになっている方がいらっしゃるかと思います。また、「ウ○チ、ウ○チと連呼してなんてお下品なんでしょう!」と憎悪の念を抱かれている方もいらっしゃると思います。犬の話をしてしまった以上、犬と研修医との関連について気の利いたお話をしようと思いましたが何も思い浮かびません。そこでYahoo知恵袋を検索したところ「研修医って犬や猫は飼えませんよね?」という質問を見つけました。この質問に対して「仕事で長時間留守にするから飼えないですね」という回答が大半でした。ただでさえ多忙な研修医生活なのに動物を飼うなんて、同居の家族がいればまだしも一人暮らしの場合はかなり至難の業です。

実は私、初期研修医1年目の時に猫を飼っていたんです。ちょうど消化器内科を回っていた時でした。もう20年以上も前の話です。腹水精査目的で入院されていたあるおばあさんを私は担当していました。ある日その方が私に飼い猫の話をして下さいました。そのおばあさんは一人暮らしで子猫を飼っていたのですが、急に入院になりひとまず獣医さんに子猫を預けたそうです。しかし悪性腹水のため退院できる見込みがなく、自分は身寄りもないため誰にも預けることができず子猫の事が心配で心配で夜も眠れないと相談を受けました。当時私は医師になったばかりで、患者さんの役に立たなければと使命感にあふれていたので何も考えずに「だったら僕が預かりましょう」とつい調子良く言ってしまったのです。その日から私の研修医生活は鬼のように忙しくなりました。まず、獣医さんのところに猫を引き取りに行きました。猫なんて飼ったことがなかったので不安でいっぱいでしたが、子猫をみた途端不安は吹き飛びました。なんて可愛らしい子猫なんでしょう。名前は「チャーちゃん」、オスのヒマラヤンでした。ただ見た目はもふもふしていてとても可愛らしいのですがかなりの暴れん坊でした。まず困ったのがおしっこ問題です。日中長時間留守にしてしまうので十分なしつけができずやむを得なかったのですが、夜ヘトヘトになって自宅に帰ってみるとなんとふとんの上におしっこをしているではあーりませんか。おまけにアパートの壁をガリガリ爪で引っ掻いて壁をボロボロにしてしまった日にはさすがにチャーちゃんに怒りをぶつけてしまうこともありました。極めつけは大家さんが「ピンポーン」と私の部屋に訪ねてきた時、そしらぬ顔でチャーちゃんが玄関に出てきて「ニャー」と挨拶してしまったのです。私が当時住んでいたアパートはペット禁でしたので「ああ、終わったな」と天を仰ぎましたが、なんとその大家さんはとても寛大で見て見ぬふりをして下さいました。大家さんがこの日記を見ている可能性はゼロに等しいですがこの場を借りてあらためて御礼申し上げます。そんな荒くれ者のチャーちゃんですが寝るときは一緒の布団に入ってきてスリスリしてくれて、疲弊した研修医生活の癒しの存在でもありました。そのおばあさんは結局婦人科系の悪性腫瘍であることが判明し産婦人科に転科となりましたが、転科した後も私とチャーちゃんとの生活は続きました。おばあさんの病状は徐々に悪化していき、私はできる範囲でおばあさんの願いを叶えるように努力しました。おばあさんの願いで多忙な業務の合間にチャーちゃんに去勢手術を受けさせたり、週1回サボテンに水をあげに行ったりしていました。研修医の業務としてはすでに逸脱しており今となっては反省していますが、当時はこれが人として正しい行いだと信じていました。おばあさんの病気はさらに進行しいよいよ緩和治療に移行することになり埼玉の病院へ転院となりました。私は当直のない休日には埼玉の病院までお見舞いに行き、チャーちゃんの近況を報告しました。おばあさんはとても喜んでくれました。しかしある日衝撃の事実が発覚しました。なんと身寄りのないはずのおばあさんに実は息子さんがいることがわかったのです。結局、おばあさんは息子さんとチャーちゃんと一緒に故郷へ帰ることとなり、私とチャーちゃんとの生活は突如終止符を打つこととなりました。私はやっと肩の荷が下りた、とホッとした反面、何だか寂しい気持ちもこみあげてきてとても複雑な心境でした。チャーちゃんと過ごした時間は短かったですが、想い出は決して色褪せることなく今でも私の心の中に刻まれています。

猫の面倒をみる暇があったら、初期研修医として必要な知識や技術をもっと学ぶべきだったのでは、というご意見もあるかと思います。全くその通りです。私は出来の悪い研修医だったので本当は人の倍学ばなければなりませんでした。また、「患者さんに首をつっこみ過ぎ」「公私混同だ」と批判される方もいらっしゃると思います。全くその通りです。医師はプロとして私情を挟むべきではないですし、全ての患者さんに対する公平性を保つ必要があります。このような点で研修医に成り立ての私は医師として思慮に欠けていたと思います。しかしながら一人暮らしの高齢者が抱える苦悩や介護難民問題など高齢者医療の課題、そして終末期を迎える患者さんに対する緩和ケアの心を研修医ながらも肌で感じることができたのは、医師として、そして一人の人間としてかけがえのない貴重な経験であったと思います。

 さて、皆さんがこれから迎える研修医生活では一体どのような出来事が待ち受けているのでしょうか。嬉しい事や悲しい事、楽しい事や辛い事、平凡な事からびっくりする事まで沢山の出来事を経験されると思います。期待と不安で胸がいっぱいだと思いますが、全てが皆さんの素晴らしい人生の糧になりますので、大切な仲間と一緒に力を合わせて頑張って下さい。皆さんに輝かしい未来が待っていることを心からお祈り申し上げます。

 

 おっと、私はこれからラーちゃんのウ○チと格闘しなければならないのでこの辺で失礼致します。(最後までお下品で本当に申し訳ございません)

 

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ラーちゃんです。

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